研究課題/領域番号 |
20K08611
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
向山 政志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40270558)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 慢性炎症 / 急性腎障害 / MRP8 / ANGPTL2 / osteocrin / マクロファージ / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)の発症・進行の病態解明と新たな治療法開発を目指して、その分子基盤として重要な腎内慢性炎症とそれにかかわる液性因子に注目して研究を行った。 まず、マクロファージ(Mφ)の炎症惹起因子myeloid-related protein 8(MRP8)について、MRP8欠損マウスに腎炎を発症させて検討を行い、Mφの特性変化を介して炎症を軽減することを明らかにした(Sci Rep, 2020)。またこの際、Mφとメサンギウム間情報伝達を介した炎症増幅の可能性を示すとともに、メサンギウム-ポドサイト連関を介した腎障害増悪の機序についても知見を得た(FASEB J, 2020)。次に、多彩な作用を有する炎症惹起因子angiopoietin-like protein 2(ANGPTL2)の腎障害における意義について、欠損マウスに虚血再灌流による急性腎障害(AKI)を施し、検討を行っている。現時点で、急性期と慢性期で異なる意義を有する可能性を見出している。また、ポドサイト特異的ANGPTL2欠損マウスを作製し、腎障害モデルの検討に着手した。さらに、骨由来Na利尿ペプチド関連因子Osteocrin(ostn)のAKIモデルにおける意義を検討し、Ostn過剰発現マウスが腎障害を軽減すること、その機序に尿細管におけるWnt-βカテニン系活性化の抑制が関与する可能性を見出した。一方、臨床研究として、慢性血液透析患者の臨床データと上記バイオマーカーとの関連を解析中である。これまで、血中MRP8濃度が高リン血症患者において死亡リスクと関連すること(BMC Nephrol 2020)、血中ANGPTL濃度高値が動脈硬化進展に関与すること(Atherosclerosis 2020)を見出した。 以上より、これら液性因子のCKD進展における意義が示唆され、創薬ターゲットとなる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示した内容について、進み方に違いはあるものの、徐々に成果がでてきており、また一部は想定した範囲をこえて内容が広がっている。また、そのいくつかについて学会発表(日本腎臓学会、日本糖尿病学会、日本心血管内分泌代謝学会等)を行うことができた。さらに、論文発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ANGPTL2欠損マウスを用いた急性腎障害、慢性腎臓病モデルでの検討をさらに進め、とくにポドサイト特異的欠損マウスを用いた実験(糖尿病、腎炎モデル等)についても検討を始める。加えて、これを抑制する手段としての新たな手法についても検討していく。MRP8については、臨床的意義の検討をさらに進めていく。また、Osteocrinについては、in vitroの系を用いて細胞内シグナルの検討を進めていく予定である。
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