研究課題
慢性腎臓病(CKD)の発症・進行の病態解明と新たな治療法開発を目指して、その分子基盤として重要な腎内慢性炎症及びそれに関わる液性因子に注目して研究を進めてきた。既に、糖尿病性腎臓病におけるマクロファージ(Mφ)-メサンギウム連関とそれにおけるmyeloid-related protein 8(MRP8、S100A8)の意義を報告した。またその連関にMφ由来エクソソームを介した細胞間クロストークが病態進展に関与する可能性を見出した。そこで、drug repositioningの手法を用いてエクソソームの影響を阻害し得る化合物をスクリーニングしたところ、HSP90阻害薬の1種を同定することに成功した。さらにこれをSTZ糖尿病ラットモデルに投与したところ、有意の腎症軽減効果を認めた。次に、重症の腎症を呈するA-ZIP/F1糖尿病マウス糸球体を用いたシングルセルRNA解析を進め、新たな因子の探索を行った。得られた6候補遺伝子において高感度in situ hybridizationを行い、UMAP plotの妥当性を検証、最終的にNr4a1、Pfkfb3、Spon2の3つの遺伝子を決定した。現在、CRISPR/Cas9システムを用いて当該遺伝子欠損マウスを作製中であるが、一部で個体が得られ解析を行っている。一方で、多彩な作用を有する炎症惹起因子angiopoietin-like protein 2(ANGPTL2)はCKDにおいて腎線維化進展に働くことを示したが、急性腎障害(AKI)における役割は明らかでない。この欠損マウスを用いて虚血再灌流モデルで検討したところ、CKDと異なりAKIでは腎保護的に作用することを見出した。この機序を解析し、PI3K-AKT-Keap1経路を介してNRF2安定化をきたし抗アポトーシス作用に働くことを認めた。さらに、ANGPTL2が生理的に発現し腎症進展の鍵となるポドサイトに着目し、ポドサイト特異的欠損マウスを作製、現在機能解析のための個体数を増やしている。これら液性因子の意義解析から、創薬ターゲットとしての可能性について検討を進めていく予定である。
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