研究課題/領域番号 |
20K08616
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 慢性腎臓病 / Piezo2 / メサンギウム細胞 / 傍糸球体細胞 / レニン |
研究実績の概要 |
腎臓の細胞は、血流や尿流に起因するメカノ刺激にさらされているが、その感知応答機構は不明な点が多い。本研究では、メカノセンサー分子、特にTRPV2とPiezoに着目し、急性腎障害や慢性腎臓病の病態解明と新規診断法・治療薬開発を目指す。 本目的を達成するために、①TRPV2の尿細管障害における役割、②Piezoの糸球体・腎病変における役割、③腎求心性感覚神経に発現するメカノセンサーの同定と難治性高血圧における役割、④腎障害の三次元イメージング、の4目標を設定し、当該分子の局在や上流・下流因子を決定し、疾患モデル動物や阻害薬、遺伝子改変マウスを用いた解析を実施する。 今年度はマウスの腎臓におけるPiezo2発現とその調節について検討した。正常マウス腎臓において、Piezo2 mRNAが糸球体に限局して発現し、主にメサンギウム細胞と傍糸球体レニン産生細胞に局在していることがRNAscope in situ hybridizationによって示された。Piezo2GFPレポーターマウスを用いた検討でも、同様の局在が確認された。胎生期には、Foxd1陽性間質前駆細胞と、それから派生する細胞に発現が認められた。脱水モデルでは、メサンギウム細胞におけるPiezo2発現は減弱し、レニン産生細胞ではレニン発現領域拡大とともにPiezo2発現は増強した。 以上、Piezo2がメサンギウム細胞とレニン産生細胞に発現することがmRNA、蛋白レベルで示された。糸球体や輸入細動脈の内圧・血流量が低下するマウスモデルにおいて、Piezo2発現が細胞特異的に増減し、特にレニン産生と密接に関わっていたことから、Piezo2が腎臓の糸球体濾過や体液バランスの制御において重要な役割を担うことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度、Piezo2が糸球体に限局した発現パターンを示すことを見いだしたので、今年度は発現細胞を特定し、その発現調節やノックダウンによる変化を解析した。Piezo2 mRNAはポドサイト、糸球体内皮細胞マーカーとは重ならなかった。メサンギウム細胞マーカーを検索し、Pdgfrbがメサンギウム細胞マーカーとして有用であること、Piezo2はPdgfrbと共陽性であり、発現細胞を明らかにすることができた。さらに、傍糸球体装置のレニン産生細胞にも発現していることが示された。蛋白レベルでの発現については、市販の抗体ではシグナルが検出できなかったため、レポーターマウスを取り寄せて解析することで、mRNA解析と同細胞に発現が認められた。マウス胎生期における発現、脱水モデルにおける発現変化、培養細胞でのsiRNAによるノックダウンによる変化の解析を加え、学術論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓の細胞は、血流や尿流に起因するメカノ刺激にさらされているが、その感知応答機構は不明な点が多い。本研究では、メカノセンサー分子、特にTRPV2とPiezoに着目し、急性腎障害や慢性腎臓病の病態解明と新規診断法・治療薬開発を目指す。 本目的を達成するために、①TRPV2の尿細管障害における役割、②Piezoの糸球体・腎病変における役割、③腎求心性感覚神経に発現するメカノセンサーの同定と難治性高血圧における役割、④腎障害の三次元イメージング、の4目標を設定し、当該分子の局在や上流・下流因子を決定し、疾患モデル動物や阻害薬、遺伝子改変マウスを用いた解析を実施する。 次年度は、ポドサイト特異的Piezo1 KOマウス、メサンギウム細胞特異的Piezo2 KOマウスを用いて、腎障害性負荷をかけて表現型の解析を行い、その病態生理的役割とシグナルカスケードを明らかにする。細胞特異的KOマウスの作製は順調に進んでいる。腎障害の三次元イメージングを行い、腎求心性感覚神経の分布パターンとPiezo2発現細胞の関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Piezo2の発現細胞がポドサイトや糸球体内皮細胞ではなく,メサンギウム細胞であったため,メサンギウム細胞やレニン細胞特異的Piezo2 KO マウスを作製し,腎障害モデルを作製して,Piezo2 KOによる表現型の変化を解析する.KOマウス樹立が次年度になるため,研究費を一部次年度に持ち越した.
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