プログラヌリン(PGRN)はTNF受容体(TNFR)にTNFαと競合して結合することにより、TNFα経路を抑制する。われわれは、PGRNを欠損させることによって、間接的にTNFα刺激を増強させ、腎障害進展に与える影響を検討した。 8週齢のPGRNノックアウトと野生型マウスに12週間にわたり、通常食あるいは高脂肪食を投与した。アルブミン尿、尿細管障害マーカー、腎組織における炎症性サイトカイン(TNFα、MCP-1、VCAM-1)のmRNA発現は野生型マウスの高脂肪食群と比較して、KOマウスの高脂肪食群において上昇していた。これらの結果にもかかわらず、体重、近位尿細管の空胞化、全身あるいは脂肪組織の炎症マーカーは、野生型マウスの高脂肪食群よりKOマウスの高脂肪食群で低下していた。そこで、タンパク質の再吸収に関与するエンドサイトーシス受容体であるメガリンの腎での発現を確認したところ、通常食、高脂肪食など食事のタイプにかかわらず、野生型よりKOマウスで低下していた。 また、マウス近位尿細管細胞をTNFαで刺激すると濃度依存的に、メガリンとPGRNのmRNA発現レベルは上昇した。次に、TNFα刺激とPGRNをsiRNAでノックダウンすると、各々単独よりも相加的にメガリンの発現は低下した。 以上より、高脂肪食で肥満を誘導したマウスにおいて、PGRN欠損は、腎の炎症悪化および脂肪組織を含む全身の炎症改善させることが明らかになった。また、高脂肪食で誘導したPGRNノックアウト肥満マウスにおける近位尿細管の空胞化の改善の一部は、近位尿細管細胞のメガリン発現低下に伴う蛋白尿再吸収低下に伴い、エンドソーム/ライソゾームの機能改善で説明できるかもしれない。
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