研究実績の概要 |
慢性腎臓病は二次性副甲状腺機能亢進症を背景とする高回転型骨病変に代表される骨代謝異常をきたすことが知られているが,急性腎障害が骨代謝に及ぼす影響は明らかではない。 そこで2021年度の検討課題として,われわれは6週齢雄SDラットにおいて急性腎障害が骨代謝に及ぼす影響を検討した。35分間の両側腎動脈虚血再灌流障害(IRI)を誘導またはsham手術を行い,経時的な骨ミネラル代謝の変化を観察した。両側IRI群では,sham群と比較し,手術翌日に著明なBUN上昇を示すとともに,血清リン値,PTH値,FGF23値の著しい上昇,1,25(OH)2D値の低下を認めた。これらの変化は,術後2~3日目において改善傾向を示した。両側IRIの3日後に骨形態計測を行うと,IRI群で類骨量,類骨面,類骨幅,骨芽細胞面の著明な上昇を認めた。石灰化骨量や浸食石灰化骨面,石灰化骨線あたりの破骨細胞数についてはsham群と同等であった。両側IRIの3日後以降,腎機能の回復に伴ってミネラル代謝の変化は徐々に改善し,IRIの4週後にはほぼ正常化した。この時点での骨形態計測パラメーターは,両側IRI群とsham群で同等であった。 以上の結果より,ラットIRIモデルにおいて,著しい類骨形成促進を特徴とする急激な骨形態の変化が出現することが明らかとなった。しかしその変化は一時的であり,石灰化骨の増加には至らなかった。一過性の類骨形成促進の要因は現時点で明らかではないが,PTHの著しい上昇を伴うことからPTHの骨形成刺激作用が関与している可能性が想定された。
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