研究課題/領域番号 |
20K08620
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
三井 亜希子 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50544417)
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研究分担者 |
清水 章 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00256942)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糸球体腎炎 / 内皮細胞 / イメージング / 炎症細胞 |
研究実績の概要 |
進行性の糸球体疾患は、原因に関わらず糸球体障害の遷延から糸球体硬化へと進展し、最終的に末期腎不全に至る。申請者らは、糸球体硬化の進展抑制には糸球体内皮細胞の形態・機能の維持と障害後の適切な修復が重要であると考えている。内皮細胞には形質の異なる細胞群が存在することが知られており、糸球体障害後の修復に関わる内皮細胞にはどのような特徴があるのかに着目した。本研究は、内皮細胞の形態の変化、代謝プロファイルを中心とした機能の変化、血管内皮幹細胞の存在の有無(自己再生能を持つか)について検討し、糸球体毛細血管網の恒常性の維持と障害後の修復を誘導する因子の同定を目的としている。 ラット可逆性腎炎モデルを用いて、腎炎惹起後の糸球体障害から修復する過程を経時的に検討している。糸球体内皮細胞とそれを取り巻く細胞群の動き、形態変化を3次元イメージングにより可視化するため、透明化試薬および透明化プロトコールを複数検証し、抗原性を保持しつつ、厚みのある組織サンプルの顕微鏡観察に適した方法を安定しておこなうことが可能となった。また、単離糸球体およびレーザーマイクロダイセクション(LMD)法により採取した内皮細胞を用いて代謝プロファイルを検討するため、現在複数の候補遺伝子を検討中である。 ヒトサンプルを用いた検討では、臨床で経験する『治る腎炎』と『治りにくい腎炎』で内皮細胞障害の重症度に違いがあり、糸球体内に浸潤している炎症細胞の質が異なるのではないかと考え、画像解析により糸球体毛細血管網を定量化し、浸潤マクロファージの形質の違いと内皮細胞障害の重症度の関連性について報告した(Sci Rep 2021)。また、ポドサイト障害に起因する巣状糸球体硬化症においても糸球体内皮細胞障害が存在し、そのvariantごとに内皮細胞障害の重症度が異なることを報告した(Kidney Int Rep 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験モデルの検討では、可逆性腎炎モデルの作製は問題なくできており、得られた腎組織サンプルを解析中である。臓器透明化による3Dイメージングは、透明化試薬を複数検証し、抗原性を保持しつつ、厚みのある組織サンプルの顕微鏡観察に適した方法を安定しておこなうことが可能となった。また血管内皮細胞の同定も可能となり、現在内皮細胞とそれを取り巻く細胞群や浸潤している炎症細胞の同定をおこない、経時的な変化を検証している。ラットのサンプルであることから、内皮細胞を標識し採取することが難しく、またLMD法による内皮細胞の採取によって得られるサンプルも非常に微量なことから遺伝子発現解析に難渋している。血管内皮幹細胞の同定についても、フローサイトメトリーによる検証が進んでおらず、この点においてやや遅れている。 ヒトサンプルを用いた検討では、これまでに管内増殖性糸球体腎炎を呈する様々な疾患において、内皮細胞障害の重症度を画像解析により定量化し、治る腎炎の代表である溶連菌感染後糸球体腎炎では内皮細胞障害が軽度であること、浸潤しているマクロファージの検討により抗炎症性のM2マクロファージが他の疾患より多いことを見出し報告した(Sci Rep 2021)。また、治りにくい腎炎の代表であるANCA関連血管炎では好中球細胞外トラップ(NETs)形成に関与する好中球(シトルリン化ヒストン陽性好中球)が糸球体内、傍尿細管毛細血管内に多く浸潤し、強い炎症を惹起している可能性を見出し報告した(Histopathology 2021)。さらにポドサイト障害に起因する巣状糸球体硬化症においても糸球体内皮細胞障害が存在し、そのvariantごとに内皮細胞障害の重症度が異なることを見出し報告した(Kidney Int Rep 2022)。臨床サンプルを用いた検討では概ね順調に研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトサンプルを用いた検討では、内皮細胞障害の重症度や浸潤している炎症細胞の形質の違いについての検討は順調に進んでおり、今後は内皮細胞自体の形質の違いについて検討を進める。まずはLMD法により採取した糸球体を用いて、血管新生や代謝プロファイルに関連する遺伝子の発現について、疾患による違いや同一疾患においても病期による違いの有無について検討する。 動物実験に関しては、引き続き腎炎モデルの腎組織サンプルを用いて、3Dイメージングにより糸球体毛細血管網を可視化し糸球体障害後の修復過程を経時的に観察する。単離糸球体のサンプル処理と遺伝子発現解析は可能であるが、糸球体内皮細胞のみを採取し解析をおこなう場合にはサンプル量が非常に微量なため、微量サンプルでの遺伝子発現解析のツールを現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はコロナ感染症の影響もあり、なかなか研究遂行が困難であったため非常に多くの研究費を持ち越すこととなった。今年度、本格的に研究をおこなうことが可能となり、予定どおり使用している。また、来年度も研究遂行のための物品費への使用額が多く必要となる。さらに研究成果の発表のための学会参加や論文掲載のための準備、掲載費などに使用する額も多くなるため、予定どおりの使用が見込まれる。
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