研究課題
進行性の糸球体疾患の進展抑制には糸球体毛細血管網の形態・機能の維持と障害後の適切な修復が重要である。本研究は可逆性腎炎モデル及びヒト腎生検サンプルを用いて、糸球体内皮細胞とそれを取り巻く細胞群との相互作用にどのような制御機構が働いているのかを形態と機能(代謝プロファイル)に着目し検証した。1)可逆性腎炎モデルを用いた検討:ラットThy1腎炎モデル(可逆性腎炎モデル)を作成し、糖尿病治療薬として広く使用されるメトホルミン投与(Thy1+MET)群、Thy1腎炎未治療(Thy1)群、非腎炎(NC)群に分け、経時的な腎組織像の変化、尿蛋白量の推移、単離糸球体における遺伝子発現の変化を検討した。Thy1+MET群は、Thy1群に比べ組織所見は軽減し蛋白尿も減少した。解糖系の亢進が腎炎修復に重要であると仮定し、day7の単離糸球体を用いて解糖系律速酵素の遺伝子発現を確認したがHK2の発現は3群で有意な差はなく、下流の律速酵素であるPFKFB3、PGK1の発現は両腎炎群でNC群に比べ低下していた。尿メタボローム解析の結果から腎炎惹起により解糖系の迂回経路であるペントースリン酸経路の活性化が示唆され、MET群で顕著である可能性が示唆された。2)ヒト腎組織サンプルを用いた検討:活動性の高いIgA腎症では、繰り返す炎症により細胞外基質の蓄積を伴う癒着・硬化病変が形成され糸球体硬化が進展する。これは糸球体毛細血管網の破綻とその後の修復不全に起因する。一方、IgA腎症でしばしば観察される糸球体周囲の新生血管(PGMVs)病変は、癒着を伴うが細胞外基質の蓄積は伴わず糸球体毛細血管網が保持されていることから、この病変が障害後の良好な修復機転により形成されることを論文として報告した。また、ANCA関連血管炎におけるシトルリン化ヒストン陽性好中球の存在と疾患活動性との関連について米国腎臓学会で報告した。
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Pathology International
巻: - ページ: -
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