研究課題
①診断および診療の選択に活用する体制の構築:新規に2020年度は8検体の解析対象患者検体が収集された。全エクソーム解析施行し、解析結果が返却され次第、結果をエキスパートパネル会議で臨床データや病理写真等も併せて評価し、その病原性について検討を行った。コロナ禍で一同に会する会議が困難であったためWeb会議を施行した。パネル会議の結果、候補遺伝子変異・確認が必要な患者に関しては、家族検体の収集をし、当該遺伝子解析、必要時はmRNAの評価なども進めた。既報病因変異およびACMGガイドラインで Pathogenicとされる変異については、迅速に第一報を主治医に返却した。VUS(variant of unknown significance)の症例においては、優先順位をつけて今後順次機能解析に進める方針とした。②日本人特有の病因遺伝子やバリアントに対する機能解析:ラミニン β2 鎖の欠損は、神経・目症状を合併する先天性ネフローゼ症候群のピアソン症候群を引き起こすが、我々が同定した変異(p.R469Q, p.G699R)が、日本人で頻度が多く(1.2%)、腎症状のみを呈しており、その変異の病原性が明らかでなかったが、これらの変異が古典的なピアソン症候群を起こす変異と異なり、ラミニン β2 鎖を欠損させず、ヘパリン結合性およびラミニン結合性などを上昇させ、ラミニン-521 によるフィルター形成を妨げることで選択的なろ過機能が失われ、血漿蛋白を漏出させる可能性を、東京薬科大学薬学部吉川准教授、東京大学医学部小児科張田准教授との共同研究で明らかにし、右の通り、論文報告した。(JCI Insight. 2021 Mar 22;6(6):145908.
3: やや遅れている
コロナ禍により、必要な実験器具(特にフィルター関連)が入手が困難になっており実験推進が困難になっている。また患者検体入手においても、患者の受診の遅れや病院受診機会縮小などにより、困難になっているため。
①診断および診療の選択に活用する体制の構築:本年度も、解析対象患者の収集を継続し、全エクソーム解析施行し、結果をエキスパートパネル会議で速やか評価し、既報病因変異およびACMGガイドラインで Pathogenicとされる変異については、迅速に第一報を主治医に返却し、クリニカルシーケンスの基盤づくりを一層進める。また、エキスパートパネル会議の結果、候補遺伝子変異・確認が必要な患者に関しては、家族検体の収集をし、当該遺伝子解析を進める。またVUS(Variant of unknown significance)に関しては、その影響度、重要性を鑑み、優先順位をつけ、機能解析を進める。②NUP107 遺伝子のp.D831Aを中心とした機能解析NUP107遺伝子は、日本人小児FSGS/SRNS腎移植患者の中でもその頻度は極めて高いが、腎症発症機序は不明で、日本人では、全例p.D831Aを片アレルに有し、もう1つがtruncation変異である。我々は2症例同様の遺伝子変異患者を検出したが、D831A変異とW677*変異を有する患者の腎生検組織でNUP107の発現が上昇し、また、変異 NUP107導入細胞で、D831A変異体では核内への局在が障害されていたことを見出した。これらの結果から、D831A変異体がなぜ核に局在しないのか、またなぜ別の変異との組み合わせで病態が発現するのかが次の課題になる。これを踏まえて、①D831A変異体と野生型NUP107の結合タンパク質を網羅的に解析し、その相違を検討する。また、②D831Aと他の変異を共発現させた場合にD831A変異だけの時と異なり、ドミナントネガティブ効果が生ずる可能性について検討する。
コロナ禍により、実験器具の購入ができず使用できなかったことにより予定していた解析や実験が進まなかったこと、また検体収集にも妨げになり、外注解析費が見積もりより少なくなったこと。またコロナ禍のため、学会含め一切の出張ができず、旅費が全く使用されなかったことが原因と考える。今年は、実験器具購入が進み、患者検体が増えれば解析費は昨年の見込みよりさらに増える可能性が考えられる。また新たな機能解析に取り組むため、(培養細胞使用、またはモデル動物作成など)それによる費用もさらに必要になる。また、今年は学会や会議への出張費が発生する予定でありそれらにも使用される。
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JCI insight
巻: 22 ページ: 145908
10.1172/jci.insight.145908.