研究課題/領域番号 |
20K08629
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
細島 康宏 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (50464003)
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研究分担者 |
斎藤 亮彦 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (80293207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メガリン / 近位尿細管 / 糖尿病 / 糖尿病性腎臓病 / エンドサイトーシス / バイオマーカー / SGLT2阻害薬 |
研究実績の概要 |
糖尿病性腎臓病の早期診断と予後予測においては尿中アルブミンの測定が重要であるが、様々な問題点も指摘されており、新しいバイオマーカーの開発が求められている。これまでに我々は、腎臓の近位尿細管エンドサイトーシス受容体であるメガリンに着目し、その発現調節機構、他分子との相互作用に関する基礎研究を行うとともに、ヒト尿中メガリン(全長型および細胞外ドメイン切断型)ELISA測定系を開発した。その結果、それらのメガリンの尿中排泄量測定が、糖尿病性腎臓病の重症度や病態の評価に有用であり、既存のバイオマーカーとは異なる新しいマーカーになり得る可能性を示してきた。さらに、細胞外ドメイン型尿中メガリンが新規の糖尿病関連薬などにより鋭敏に増減することも明らかにしてきたが、その尿中への逸脱機序の詳細は未だ十分に解明されていない。そこで本研究は、細胞外ドメイン型メガリンの尿中逸脱機序の詳細を明らかにすることを目的としている。 研究は主に、「細胞内輸送実験系を用いたメガリンの細胞内リサイクリングと細胞外逸脱の関係」、「DKDの進展時における細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序の解析」、「SGLT2阻害薬使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」、「バルドキソロンメチル使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」の4つの内容を明らかにしていく計画であった。今年度は、培養細胞においてメガリンの細胞内リサイクリングと細胞外逸脱の関係を検討し得る実験系を確立しただけでなく、糖尿病性腎臓病モデルマウスを用いた検討、さらにはSGLT2阻害薬およびバルドキソロンメチルを使用した動物実験を行い、その予備的なデータを得ることができた。来年度以降も継続的に検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「細胞内輸送実験系を用いたメガリンの細胞内リサイクリングと細胞外逸脱の関係」においては、培養細胞を用いて、メガリンを抗メガリンマウスモノクローナル抗体で標識し、さらにリソソームを抗LAMP-1抗体で標識して観察することで、そのリサイクリングをモニタリングする手法を確立した。 「DKDの進展時における細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序の解析」においては、10週齢の糖尿病性腎臓病モデルであるdb/dbマウスを用いた解析をおこなったところ、腎臓のメガリン発現が増加し、細胞外ドメイン型尿中メガリンも増加している傾向を確認した。 さらに「SGLT2阻害薬使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」について、10週齢のdb/dbマウスにSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン1mg /日、14 日間)を投与したが、コントロール群と比較して、腎臓でのメガリン発現量、メガリンのリガンドであるα1-ミクログロブリンの尿中排泄量、および尿中メガリン排泄量に明らかな違いは確認できなかった。 「バルドキソロンメチル使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」では、野生型マウスにバルドキソロンメチルを1.25mg/kg を3日間、2.5mg/kgを4日間, 5.0mg/kg を7日間の計14日間、漸増して投与したところ、腎臓のメガリンの発現は低下傾向であり、遺伝子発現にも低下を認めた。尿中α1-ミクログロブリンの排泄量が有意に上昇していたが、尿中メガリン排泄量はコントロール群のばらつきが大きく評価不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
「細胞内輸送実験系を用いたメガリンの細胞内リサイクリングと細胞外逸脱の関係」においては、様々なメガリンの細胞内アダプター分子も標識を行い、その関連を検討していくだけでなく、細胞内リサイクリングおよび細胞外逸脱を亢進させる因子の探索を行う予定である。 「DKDの進展時における細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序の解析」では、 6週齢、8週齢、10週齢、12週齢のdb/dbマウスにおける尿中メガリン排泄量だけでなく、 α1-ミクログロブリンなどのメガリンリガンドの排泄量、さらにはMMP活性などを継時的に評価することで、メガリンの機能亢進(糸球体過剰濾過が生じる前)と尿中へのメガリン逸脱の機序を探索していく。 また、「SGLT2阻害薬使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」において、db/dbマウスで糸球体過剰濾過が生じてしまうと、尿中α1-ミクログロブリンの排泄量を検討することで腎臓におけるメガリンの活性を評価することが困難となる。よって、糸球体過剰濾過が生じる前でメガリンの機能亢進が生じている週齢を見極めるため、上述の検討により評価に適する週齢を決定してから、再度、SGLT2阻害薬の投与実験を行う予定である。 「バルドキソロンメチル使用時の細胞外ドメイン型尿中メガリンの逸脱機序」においては、野生型マウスの検討では尿中メガリン排泄量はコントロール群のばらつきが大きく評価不十分であったため、個体数を増やして検討を行う予定である。また、db/dbマウスなどの病態モデル動物にバルドキソロンメチルを投与し、尿中メガリンの排泄量やMMP活性なども評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の大流行の影響もあり、予定していた旅費が必要なかったことも影響していると考えます。来年度に有効活用したいと考えています。
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