研究課題/領域番号 |
20K08631
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
内村 幸平 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00646119)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | iPS細胞 / オルガノイド / 細胞アッセイ |
研究実績の概要 |
2018年Cell Stem Cell誌に報告したヒト多能性幹細胞より作製した腎臓オルガノイドの問題点:①分化が未熟なため病態モデルとして使用できない、②尿管芽由来の集合管が含まれていない、に対するアプローチとして新規腎臓オルガノイドの分化誘導法を独自に開発し、2020年12月Cell Reports誌に発表した。新たに開発した新規成熟腎臓オルガノイドは腎毒性物質(シスプラチン)処理によってKIM1(Kidney Injury Molecule 1)やNGALNeutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin)といった急性腎障害特異的マーカーの発現が誘導され、更にはバソプレシン処理によって集合管の主細胞細胞質に存在するAQP2が管腔側へ移動することが確認された。これら生体腎で観察される生理的機能を細胞培養ディッシュ上で再現することが可能となったことによって、これまで種差の問題でマウスやラットを用いた動物実験が難しかったヒト特有の病態についての病態解明を目指した研究への展開を予定している。 2020年度はヒトiPS細胞を理研BRCより分与頂き、種々の成長因子処理濃度や期間を微調整することにより山梨大学腎臓内科の実験室にて新規成熟腎臓オルガノイド作製可能であることを確認した。2021年度からはマウスでは再現困難であった無症候性高尿酸血症モデル、糸球体腎炎、慢性腎臓病(CKD)モデルなどヒト特有の病態モデルを作成し、詳細な病態解明とドラッグスクリーニングへの発展を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月から実験開始を予定していたが、COVID-19パンデミックの影響を受けて理研BRCからヒトiPS細胞を分与頂き、納入される時期が約3か月遅れてしまった。更にヒトiPS細胞株によって成長因子の濃度や処理期間を微調整する必要があり、最適なコンディションを模索する期間を想定以上に消費したため。
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今後の研究の推進方策 |
無症候性高尿酸モデルを再現するためには尿酸を溶解する必要があり、現時点ではNaOH等のアルカリ性溶媒を想定しているがNaOHによる細胞毒性も問題となるため溶媒について検討を行う必要がある。無症候性高尿酸モデルの再現が困難な場合は糖鎖修飾不全IgA血清やインドキシル硫酸を用いたIgA腎症モデルや慢性腎臓病モデルなどの動物実験では不可能であったヒト特有の病態に挑戦したい。
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