研究課題/領域番号 |
20K08636
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
正木 崇生 広島大学, 病院(医), 教授 (30397913)
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研究分担者 |
中島 歩 広島大学, 医系科学研究科(医), 共同研究講座教授 (40448262)
土井 盛博 広島大学, 病院(医), 助教 (80626127) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 免疫抑制薬 / ステロイド / 腎線維化 |
研究実績の概要 |
欧米諸国で、間葉系幹細胞:Mesenchymal Stem Cells (MSC) を用いて腎機能の低下を抑制しようとする臨床試験が開始されている。申請者らも明らかにしているように、腎障害モデルに対するMSCの投与は、腎臓への炎症細胞浸潤を抑制し、腎線維化を抑制する。しかし、ラット尾静脈から投与したMSCの腎臓への生着数は僅かであり数日で消失することが問題点として挙げられる。MSCの腎臓への生着数・生着期間が、治療効果に与える影響については明らかではない。また、MSCによる腎線維化の抑制効果が、ステロイドや免疫抑制薬との併用によって影響を受けるかについても明らかにされていない。 我々は、一側性尿細管閉塞(UUO)を作製した3日後に、プレドニゾロン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、PBS(コントロール)をラットの腹腔内へ注射し、その翌日にMSCを尾静脈から投与した。UUOモデル作製14日後の腎組織で線維化の程度を評価したところ、シクロフォスファミド群でのみ、線維化抑制効果が減弱しており、MSCの治療効果が減弱していることが示唆された。次に、アデノ随伴ウイルスを用いてGFPを過剰発現させたMSCを作製し、生着数・生着期間との関連について検討した。PBS(コントロール)と比較して、シクロフォスファミド投与群でのみGFP陽性細胞数の有意な低下を認めた。以上より、シクロフォスファミドはMSCの障害部位への遊走能を減弱させ、治療効果を低下させる可能性が示唆された。 今後、MSCを用いて腎機能の低下を抑制しようとする治験が、各国で展開されることが予想されるが、本研究は、ステロイドや免疫抑制薬を使用中の腎臓病患者や腎移植後の患者においても、MSCによる腎線維化の抑制効果が期待できるかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一側性尿細管閉塞(UUO)を作製した3日後に、プレドニゾロン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、PBS(コントロール)をラットの腹腔内へ注射し、その翌日にMSCを尾静脈から投与した。UUOモデル作製14日後の腎組織で線維化の程度を評価したところ、シクロフォスファミド群でのみ、線維化抑制効果が減弱しており、MSCの治療効果が減弱していることが示唆された。次に、アデノ随伴ウイルスを用いてGFPを過剰発現させたMSCを作製し、生着数・生着期間との関連について検討した。PBS(コントロール)と比較して、シクロフォスファミド投与群でのみGFP陽性細胞数の有意な低下を認めた。以上より、シクロフォスファミドはMSCの障害部位への遊走能を減弱させ、治療効果を低下させる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
MSCを活性化させる因子であるIFN-γは、一側性尿細管閉塞後に腎臓で発現が著増することから、一側性尿細管閉塞を施行する前のラット腎に、IFN-γのsiRNAを腎動脈より投与し、IFN-γがノックダウンされた際のMSCの治療効果を判定する。さらに、一側性尿細管閉塞(UUO)を施行した3日後に、プレドニゾロン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、PBS(コントロール)をラットの腹腔内へ注射し、その翌日にMSCを尾静脈から投与するモデルに対して、IFN-γの添加培地で培養したMSCの治療効果について明らかにする。
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