研究課題/領域番号 |
20K08638
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
柿添 豊 熊本大学, 病院, 講師 (70583037)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セリンプロテアーゼ / 多発性嚢胞腎 / 慢性腎不全 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
研究実績の概要 |
2020年度の検討により多発性嚢胞腎(PKD)のモデルラットであるPCKラット(ヒト常染色体優性多発性嚢胞腎と同様に、腎臓と肝臓に嚢胞形成を認める)の腎組織中にある種セリンプロテアーゼ(SP)活性の亢進を認め、合成SP阻害薬(SPI)を混餌投与することによりこれらのSP活性の低下を認め、腎嚢胞増大抑制効果と腎不全抑制効果を確認した。腎組織中の腎障害マーカー発現をreal-time PCRで評価したところ、PCKで上昇した炎症・線維化関連分子の発現亢進はSPIにより抑制されていた。 2021年度は先ず腎組織中で活性化亢進しているSPを同定し、western blottingでも確認した。次にSPIの治療効果の機序検討を行った。このSPはprotease activated receptor(PAR)を介して細胞増殖や炎症・線維化、アポトーシスを亢進することが報告されているが、PCKラットにおいてもPARの発現亢進と下流のシグナルであるERKの活性化を認め、SPIはこの系の活性化を抑制した。さらにSPIはアポトーシス細胞の増加やEGFシグナルも抑制していた。またSPはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を活性化することが知られており、MMPが嚢胞増大に関与していることが報告されている。PCKラットの腎組織中でMMPが活性化しており、SPIにより抑制されていた。SPIが多面的な効果により嚢胞増大を抑制していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は多発性嚢胞腎の病態に関与するSPの同定とSPによる病態進展の機序解明を行った。SPIにより腎組織中の当該SP活性の低下とともに、PARおよびEGFのシグナル、アポトーシス、MMP活性が抑制されており、SPによる嚢胞増大の機序の一部を解明でき、計画は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにSPIはPCKラットにおいて肝嚢胞の増大を抑制することを確認している。しかし、腎組織中で活性が亢進したSPは肝臓では活性化が検出できなかった。2022年度はSPIの肝嚢胞増大抑制効果の機序の検討を行う予定である。
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