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2021 年度 実施状況報告書

難治性皮膚疾患に関わる新規脂質関連分子の網羅的探索と機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K08647
研究機関東京大学

研究代表者

住田 隼一  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30609706)

研究分担者 佐藤 伸一  東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20215792)
武富 芳隆  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40365804)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード脂質代謝 / 皮膚疾患
研究実績の概要

皮膚の恒常性維持において、皮脂腺から分泌あるいは表皮角質層を覆う脂質成分が、水分透過性バリア、微生物感染防御などに重要な役割を担っていることが知られており、皮膚の脂質異常がアトピー性皮膚炎など皮膚疾患の病態に関与することを示唆する報告がなされてきている。しかしながら、Phospholipase A2(PLA2)ファミリーを中心とする脂質代謝酵素群がそれらにどのように関わるかは不明な点が多い。そこで、本研究では、まず、ヒト臨床サンプルを用いて、ヒト皮膚免疫関連疾患に関わる新たな脂質代謝関連分子の発現を網羅的に探索することで、疾患におけるその重要性を推察する。続けて、その分子の病態における役割について、疾患モデルマウスや遺伝子改変マウス、in vitroの実験などを駆使することで、詳細に解明することを目的としている。現在のところ、予定通り、皮膚疾患特異的に発現が変動する脂質関連分子を複数見つけることができており、中には疾患マーカーや合併症の有無との相関がみられている分子もあることから、網羅的解析による成果は得られている。今後は、組織染色などを用いて各分子の発現局在などについても検討を行い、脂質代謝関連酵素については、その代謝産物などについても検討すべく脂質質量分析なども計画している。さらには遺伝子改変マウスや疾患モデルなどを用いることで、各分子の皮膚疾患・病態における機能解析についても研究を展開していきたいと考えており、一部の分子についてはすでに開始できている。これらの研究は、皮膚免疫関連疾患を標的とし、臨床サンプルと実験動物を用いて、網羅的・包括的に解析するものであり、脂質をターゲットとした新規創薬展開の基盤となる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに臨床検体を多数取得しており、皮膚凍結組織片からRNAを抽出し、各脂質関連遺伝子のmRNA発現量を病変部と非病変部あるいは健常皮膚とで網羅的に比較検討を実施した。アトピー性皮膚炎、乾癬、全身性強皮症といった各皮膚疾患において特異的に上昇/低下する脂質代謝関連遺伝子をリストアップできている。また、 病態の特徴と関連のある合併症や疾患マーカー、例えば、アトピー性皮膚炎では、血清TARC値、血清IgE値などとの相関についても検討を行ったところ、有意な相関を示す分子も存在し、現在、検体数を増やして、これらのデータの更新も実施しているところである。これらのデータは、 特定の分子が疾患特異的に病態に寄与している可能性を示し ており、詳細に解析することで、病態解明や新規治療開発につながる可能性がある。一部の分子については、野生型に疾患モデルマウスを用いて皮膚をサンプリングしてRNAを抽出して同様の検討を行い、ヒト検体と同様の発現変化が見られることを確認できている。このように、ヒトとマウスの疾患あるいは疾患モデルで同様の変動を示した分子については、ノックアウトマウスを用いた検討もすでに開始できている。

今後の研究の推進方策

ヒト臨床検体を用いた網羅的解析については、すでに有意な発現変動が見られているものも多く存在する。ただし、まだ有意な差とはなっていないが、一定の傾向を示している分子も多く、さらには、疾患マーカーや合併症有無との関連性などについては、さらなる検体数が必要と考えられるため、今後検体の追加を検討している。例えば、全身性強皮症においては、自己抗体による分類、皮膚硬化の範囲による分類、間質性肺疾患の合併の有無など多様な病態を示すため、さらなる検体数は必要と考えている。また、各分子の疾患における機能解析については、すでに遺伝子改変マウスを用いた機能解析を開始しており、今後は、疾患モデルにおける表現型の確認や、表現型がみられたものについては、分子生物学的手法なども駆使して各分子の皮膚疾患における新規機能を明らかにしていきたいと考えている。なお、将来的には、得られた結果が脂質経路を応用した新規創薬展開へつながると良いと考えており、本研究がその基盤構築につながることを期待している。

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公開日: 2022-12-28  

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