研究課題/領域番号 |
20K08651
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福永 淳 神戸大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10467649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性蕁麻疹 / 好塩基球 / FcεRI / 反応性 |
研究実績の概要 |
蕁麻疹には病悩期間が数年におよび著しくQOLが低下することのある慢性蕁麻疹から急性にアナフィラキシー症状を呈する食物アレルギーまで多彩な病型が含まれる。しかし現時点で各病型における根本的かつ病型特異的な治療法は確立されておらず、各病型における病態解明は未だに十分に進んでおらず、蕁麻疹の病態解明に関する研究を進めることは疾患特異的な治療法の確立のために重要課題である。 我々は近年、直接的原因/誘因なく自発的に蕁麻疹症状が出没する疾患である慢性蕁麻疹の病態解明の研究を進めてきている。その中で重症の慢性蕁麻疹患者の好塩基球がFcεRI シグナルに異常があること、FcεRI を介した各種刺激に対して低反応性になっていることを報告した。 診療レベルでは抗IgE抗体であるオマリズマブは難治性慢性蕁麻疹においてその有効性が証明され比較的頻繁に使用されるようになっているが、その効果発現のタイミングは多様で無効例も存在することから、慢性蕁麻疹の病態の多様性をオマリズマブが証明することとなった。オマリズマブは臨床的に一定の効果を示すが、その慢性蕁麻疹における作用機序に関しては全容は明らかとなっていない。 今回の研究においては、慢性蕁麻疹患者で異常が認められた末梢血好塩基球に着目し、蕁麻疹の各病型における好塩基球の役割を解明することを主な目的として研究を進めている。本年度は慢性蕁麻疹患者のオマリズマブの作用機序について研究を進めた結果、臨床的にオマリズマブの有効性が認められた患者ではオマリズマブ治療介入前はFcεRI を介した刺激に対して低反応性の異常状態を呈していた末梢血好塩基球がオマリズマブの投与によりその機能が正常化していることが観察された。以上の結果より、慢性蕁麻疹のオマリズマブの奏功機序に好塩基球の正常化が関わることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では蕁麻疹の各病型における好塩基球の役割を解明することを先行させる予定であったが、慢性蕁麻疹患者のオマリズマブ投与前後における好塩基球の反応性の変化のデータが先に収集され、大きな2つの目標のうち一つの目標が完了し論文化しており、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は蕁麻疹の各病型における好塩基球の役割の解明を進め、各種蕁麻疹患者の血清側のIgE-FcεRIを介した細胞への刺激能についての差異を調べていく予定である。各種蕁麻疹患者の血清側のIgE-FcεRIを介した細胞への刺激能についての研究においては当初はIgE Crosslinking-induced Luciferase Expression(EXiLE)法を用いた研究を進める予定であったが、assay上の問題が生じることが発覚し、assay方法に関して健常人細胞を用いるなど今後改良を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定と比較し本年度に本研究にかかった研究費は見積もりより少なかったが、これは研究計画が順調に進んでいないという理由ではなく、新型コロナ感染症の流行などで共同研究室の使用が一時期制限されたことによるランニングコストの減少や学会への出張による見積もっていた費用が不要となったことなども多少は影響している。新型コロナ感染症がワクチン接種で収束に向かうことが見込まれる次年度以降に研究のassayの頻度を増やす必要がありそれに伴うランニングコストが増えると想定している。また、学会出張も行える情勢になると推察され、昨年度にあまり行えなかった情報収拾を積極的に行うことで昨年度よりもその費用がより多くかかる可能性が大で、翌年度分として請求している。
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