アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:AD)の炎症は、Th2サイトカインであるIL-4/IL-13を主軸とする炎症反応(Type2炎症)と考えられている。IL-4/IL-13は、JAK1/JAK3/STAT6シグナル伝達経路を活性化する。Th2サイトカインは、Th2細胞から多く分泌されることが知られているが、近年では自然免疫細胞の一つである2型自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cell:ILC2)もTh2サイトカインを多く産生し、Type2炎症の病態に関わることが明らかにされている。皮膚におけるILC2の検討はまだ行われていないが、少なくとも腸管のILC2では芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor :AHR)の発現が高いことが報告されている。さらに、腸管のILC2において、AHRシグナルは、ILC2の活性化に必要なIL-33受容体の発現を負に調節し、IL-5、IL-13、IL-4の発現を抑制する方向に働くことが示されている。 このILC2の活性化を誘導するIL-33は、ADの発症においては表皮細胞由来のものが重要と考えられている。表皮細胞では、不活性型のIL-33が核内に発現するが、痒みなどによる掻破行動によって、物理的に表皮細胞が傷害されると、IL-33は活性型となり細胞外に放出される。今回の研究で、ADの病態において、IL-4/IL-13は表皮細胞におけるIL-33の産生を誘導すこと、治療用AHR調節薬は、このIL-4/IL-13によるIL-33の産生を抑制することを示した。さらに、この機構には、上述のJAK1/JAK3/STAT6シグナル伝達経路ではなく、MAPK経路が関与することを明らかとした。
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