研究実績の概要 |
本研究は、エクリン汗腺における上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)に着目し、その分子動態を解析する。エクリン汗腺の機能異常は、近年社会問題となっている熱中症の一因となるため、生理・病態の理解が求められている。一方、EMTは上皮細胞が間葉系細胞の如く、細胞の性質と機能を変化させる現象である。本研究ではエクリン汗腺の機能変化をEMTの視点から詳細に解析し、発汗障害を伴う難治性皮膚疾患の、分子基盤構築を試みる。 特発性後天性全身性無汗症(AIGA)患者の皮膚パラフィンブロックより切片を切り出し、トランスクリプトーム解析を行った。AIGA 患者の皮疹部・無疹部にて、EMT関連の細胞構造(KRT, VIM)、細胞接着分子(CDH, CLDN, DSG)、転写因子(SNAI, TWIST, ZEB)、細胞内外シグナル(WNT, NOTCH, TGFB1)を比較し、複数の項目で有意なfold changeが認められた。これらのうち機能的意義をもつ蛋白質を抽出し、組織での発現を確認する予定である。一方、皮膚組織の免疫染色にて、AIGA患者無汗部の汗腺分泌部細胞で約半数の細胞がαSMA陽性化していた。分泌部細胞はclear cell, dark cellに分けられ、AIGAにおいてはdark cellが変性し機能不全に陥ることが示されている。今後FOXA1二重染色でdark cellとして合致するか検討を行い、引き続きEMT関連分子(Snai1, Snai2, Twist)の蛋白質発現について検討を行う。
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