研究課題
単球マクロファージにおけるIRF8の発現低下が創傷治癒や血管障害に与える影響を検討している。創傷治癒モデルにおける皮膚では、day3-7の早期から中期にかけてIRF8発現が上昇していることから、IRF8が創傷治癒に何らかの働きをすることが想定された。そこで、骨髄球特異的にIRF8をノックアウトしたコンディショナルノックアウトマウス(LysM-cre IRF8 flox)を用いた創傷治癒過程を検討したところ、WTマウスと比較して、有意に創傷治癒遅延を認めた。Day14には両マウスとも肉眼的に上皮化したが、組織学的に、LysM-cre IRF8 floxマウスでは不完全な肉芽組織が残存した。また、LysM-cre IRF8 floxマウスでは、皮膚における血管新生因子や細胞接着因子の発現が有意に上昇しており、異常な血管新生、細胞誘導が引き起こされている可能性が示唆された。現に、LysM-cre IRF8 floxマウスの皮膚におけるCD31陽性血管数をカウントしたところ、コントロールマウスと比較して有意に増加していた。そのため、IRF8発現をRNA干渉で低下させたヒト単球とHUVECをともに培養系マトリゲルで培養し、管腔構造形成への影響を検討するほか、大腸がん細胞をSCIDマウスへ移植するiv vivo腫瘍血管新生モデルを用いて、IRF8発現低下単球が腫瘍血管新生に与える影響を検討している。現在までのPreliminaryな結果では、単球MqにおけるIRF8発現低下が、異常な血管新生を誘導することが、創傷治癒異常の一要因になっている可能性が示唆されている。また、IRF8発現低下が、単球の遺伝子発現にどのような影響を与えるかを網羅的に評価するため、IRF8発現を低下させたヒト単球を用いてRNAseqを施行し、解析中である。
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