研究課題/領域番号 |
20K08661
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小宮根 真弓 自治医科大学, 医学部, 教授 (00282632)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 褥瘡 / IL-33 / マクロファージ / 代謝 / ケラチン |
研究実績の概要 |
IL-33ノックアウトマウスでは圧負荷による皮膚潰瘍の形成が著明に抑制されていたことから、その分子メカニズムについて検討を進めた。まず、創部に多量に存在するマクロファージの表面マーカーをFACSにて検討したところ、IL-33KOマウスではWTマウスと比較してM2タイプの表面マーカ―を発現するマクロファージが多く存在した。褥瘡創部において、IL-33KOマウスではWTマウスに比べてIL-1β産生が低く、CCL17が亢進していた。IL-33KOマウスのマクロファージを単離してIL-33で刺激したところ、WTと同程度のIL-1β産生を認めた。IL-1βKOマウスでは圧負荷による炎症、好中球浸潤が抑制されていることが報告されていることから、IL-33KOマウスのマクロファージはIL-33が存在しないためにIL-1β産生量が少なく、その結果好中球などの炎症細胞の活性化が低く抑制されており、潰瘍形成が抑制されていると考えた。IL-33KOマウスとWTマウスの褥瘡部皮膚を採取して網羅的遺伝子発現を解析したところ、代謝に関連する遺伝子発現に差異があり、またマクロファージのフェノタイプに関連する遺伝子発現に差異を認めたため、褥瘡を形成したIL-33KOマウスとWTマウス、処置を行わないコントロールIL-33マウスとWTマウスの腹腔内マクロファージを採取して網羅的遺伝子発現を解析中である。また、IL-33KOマウス皮膚ではケラチン関連遺伝子の発現がWTマウス皮膚に比べ亢進していたため、WTマウスに比べてIL-33KOマウスでは圧負荷に対する抵抗性が高い可能性を考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度雇用したポスドクが休業が多く退職してしまったこと、研究代表者である私自身が現在疾患治療中であることなどから全体の進行がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
IL-33の中和抗体を褥瘡の早期治療に用いるという計画があったが、製薬会社などの協力が得られず頓挫している。今後は、IL-33シグナルを抑制する低分子の薬剤にも範囲を広げて協力が得られる製薬会社を探し、褥瘡の早期段階でその後の潰瘍形成を抑制するような薬剤の開発を狙っているが、まずはそのための基礎的データをマウスで得たいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ウイルスベクターの作成を行っているが、抽出作業を外注したところ作業が遅れ、納品および支払いが次年度にずれ込んだため。
|