今期は、IL-33ノックアウトマウスの褥瘡部において、M1、M2への分化が不十分なマクロファージ(M2-like macrophage)がWTマウスと比較して増加していることが明らかとなったため、IL-33KOとWTマウスの腹腔内マクロファージ、褥瘡部マクロファージを分離し、RNAシークエンスで差次的発現を示す分子について検討した。結果は解析中である。 IL-33KOマウスとWTマウス褥瘡部皮膚サンプルについてもRNAシークエンスにより差次的発現を示す分子について検討を加えた。皮膚においては、IL-33KOマウスにおいてケラチンに関連する分子の発現が亢進しており、外的圧力への抵抗性が増している可能性が考えられた。 IL-33は核内因子として、フィラグリン、ケラチン1、ケラチン10などの構造タンパク発現の抑制に関与していることが報告されているが、IL-33をノックアウトすることにより、これらを含む構造タンパク発現が亢進することが確認できた。さらにIL-33KOマウスにおいては、テープストリッピング刺激によって表皮肥厚がWTよりも高度に誘導され、フィラグリン発現もより高度に誘導された。TEWLについてはWT、IL-33KOの間に差は認められなかった。これらの結果は、表皮の肥厚、フィラグリン発現は、TEWLに関与しないことを示していると考えた。 期間全体を通じて、IL-33の発現が欠損することで、ケラチンなどの構造タンパク発現誘導を介して外的圧力による褥瘡形成を抑制する可能性が示された。これらのことは、IL-33抗体製剤等でサイトカインとしてのIL-33を抑制することでは褥瘡治療には不十分であることを示唆している。
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