endoglin siRNAを用いてエンドグリン阻害による血管肉腫への抗腫瘍効果のメカニズムを検討した。endoglin siRNAにより、①サバイビンの発現を抑制され、カスパーゼ3/7の活性を増強し、アポトーシスが誘導されること、②VEカドヘリンとパキシリンのリン酸化が抑制され、遊走の抑制につながること、③MMP2とMMP9両者の活性が抑制され、浸潤抑制されることが明らかとなった。一方でTGF-bファミリー受容体、Smad1、Smad2、Smad3のリン酸化には影響しなかった。以上より、血管肉腫におけるエンドグリン阻害は、Smad非依存性TGF-βシグナル伝達の調節を通じて、抗腫瘍効果がもたらされると考えられた。 さらに、血管肉腫培養細胞株ではTGF-βファミリー受容体(TβR-II、ALK1、ALK5)の強発現を認めること、endoglin阻害は、TGF-βファミリー受容体およびSmadのリン酸化に影響しなかった。 本研究全体を通じて、1)血管肉腫患者組織および培養細胞株ではエンドグリンが過剰発現していたこと、2)血管肉腫はTGF-β刺激により誘導される過剰なエンドグリン発現により進展すること、3)エンドグリン阻害により細胞数の減少及びアポトーシスの増加、遊走能・浸潤能低下、管腔形成能及びWarburg効果の抑制を認めること、4)血管肉腫におけるエンドグリン阻害は、Smad非依存性TGF-βシグナル伝達の調節を通じて抗腫瘍効果を発揮することを明らかにした。エンドグリンは、血管肉腫の新規治療標的になる可能性がある。
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