研究課題/領域番号 |
20K08676
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中村 元樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (70645051)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メルケル細胞癌 / 免疫チェックポイント阻害薬 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
抗PD-L1抗体薬・アベルマブの奏効率は、国際共同第Ⅱ層試験(EMR100070-003試験)において、化学療法歴のある88症例では31.8%、化学療法歴のない16例では62.5%であった(Kaufman HL, et al. Lancet Oncol. 2016)。すなわち半数前後の進行期メルケル細胞癌患者が、現時点で唯一の治療法であるがん免疫療法に感受性が低い・ノンレスポンダーということになる。また海外では高リスク群に対するアジュバント療法の治験も開始されており、レスポンダーとノンレスポンダー、高リスク群と低リスク群を区別するバイオマーカーの発見、およびノンレスポンダーや高リスク群に対する新たな治療法の開発が依然として求められている。 我々は本研究課題で、当院および関連施設と9つの協力医療機関より集積した71症例・90サンプルのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本、21症例・53サンプルの血液標本による解析により、メルケル細胞癌がその免疫学的因子の発現様式により、免疫活性の高いタイプ(免疫活性タイプ)、低いタイプ(細胞分裂タイプ)の2つに分類でき、G6PDの免疫染色がそれら2つのタイプを分ける指標になることを明らかにした。G6PDはPD-L1発現が低い群で最も特異的に発現している遺伝子であり、メルケル細胞癌の免疫学的な活性を評価するマーカーになり得る。免疫学的な活性が高い腫瘍は免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いことが予想でき、メルケル細胞癌に限らず、悪性黒色腫や肺癌等の他の癌腫にも応用可能な、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測マーカーの発見につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
71症例・90サンプルのFFPE標本を用いたNGS解析結果から、グルコース6リン酸脱水素酵素( G6PD)の予後マーカー、腫瘍の免疫活性マーカーとしての有用性を発見し、Journal for Immunotherapy of Cancer(Nakamura M, et al. J Immunother Cancer 2020;8:e001679. doi:10.1136/jitc-2020-001679)に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
実際に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療を行ったメルケル細胞癌を対象とした他施設共同研究を計画し、G6PDがICI治療の効果予測マーカーとなり得るかを調べる予定である。当院の倫理委員会の承認は得られ、現在共同施設での承認待ちである。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数の525円については次年度使用とする。
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