研究課題
アロネーシスとは、かゆみの知覚過敏現象のひとつで、通常は侵襲性のない刺激がかゆみと感じられる現象を指す。申請者は、CD26と呼ばれる分子のノックアウト(KO)マウスが野生型と比べ、非侵襲性の機械刺激に対し、アロネーシスを引き起こしていることを見出した。さらに、CD26欠損マウス皮膚にCD26リコンビナントタンパク質を投与すると、アロネーシスが即座に抑制されたことから、CD26の有するジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)酵素活性が、通常では皮膚でかゆみを誘発する機能を持つ神経ペプチドの分解を行ってかゆみを調節しており、CD26欠損マウスではその分解能が失われるためにアロネーシスが誘導されたとの仮説を立て研究を行ってきた。その結果、去年はCD26KOマウスにおいてアロネーシスを誘発・促進している神経ペプチドとして、エンドモルフィン(EM-1,EM-2)を同定し、皮膚におけるその局在も解らかにした。そこで今年は、EM-1,EM-2 (EMs)を健常マウスに皮内投与した際に引き起こされるアロネーシスは、末梢性μオピオイド受容体阻害薬ナロキソンメチオジドによって抑制されることを見出した。さらに、EMsそれぞれ2番目と3番目のアミノ酸の間にあるDPPIV酵素切断部位で前後に切断された、切断型EMsを前後のペプチドを混ぜ、完全長EMsと同じ組成,同じモル濃度として皮内投与し、完全長EMsのアロネーシス誘発能と比較した。その結果、切断型混合物は、完全長にくらべアロネーシス誘発能を著しく抑制していた。以上から、EMsのアロネーシス誘発能が、CD26の有するDPPIV酵素によって調節されていることが示された。
2: おおむね順調に進展している
アロネーシス促進因子EMsが、CD26分子の有するDPPIV酵素活性によって調節されていることを示唆する結果が得られたため。
今年行った実験の結果、EMsはアロネーシスとともに、通常のかゆみ(自発的かゆみ)も引き起こすことが判明した。しかし、CD26KOマウスでは、アロネーシスは引き起こされているものの、自発的掻き行動は健常マウスと比べ、有意な差は観察されていない。そこで来年度は、この一見矛盾した事象の理由について明らかにしたいと考えている。
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J Allergy Clin Immunol.
巻: 149 ページ: 1085-1096
10.1016/j.jaci.2021.08.003.
https://www.juntendo.ac.jp/news/20210927-01.html
https://research-center.juntendo.ac.jp/kankyo_igaku/research/g1/