全身性強皮症は皮膚および内臓臓器の線維化、血管異常、免疫異常を特徴とする原因不明の自己免疫性疾患である。皮膚線維化に関しては、間葉系幹細胞(MSC)投与により強皮症モデルマウスの皮膚線維化が抑制されることが報告されている。我々は分泌蛋白質MFG-E8が強皮症モデルマウスの皮膚線維化を改善させること、さらにMSCから分泌されるエクソソームの膜にMFG-E8が多く含まれることを明らかにしており、線維化抑制機序の一つとして、MSCから分泌されるエクソソームが重要な役割を担い、さらにMSC由来エクソソームの膜に存在するMFG-E8が皮膚線維化の抑制機序の一部に関わっているのではないかと考えた。そこでMSC由来エクソソームが強皮症モデルマウスの皮膚線維化を抑制するのか、またMFG-E8が皮膚線維化抑制機序に関与するのかを明らかにするための検討を行った。 ブレオマイシンによって線維化が誘発された強皮症モデルマウスの皮下にMSCの培養上清から回収したエクソソームを投与すると、皮膚肥厚の抑制、コラーゲン量の減少、αSMA陽性筋線維芽細胞の減少、炎症細胞の減少が見られ、MSC由来エクソソームが強皮症モデルマウスの皮膚線維化を抑制していることが明らかになった。またMSC由来エクソソーム添加により、TGF-β刺激によって増加したNIH/3T3細胞のI型コラーゲンおよびTGF-β受容体1の発現量が低下した。さらにMSC由来エクソソームに含まれるmicroRNAの一つであるmiR-196b-5pが皮膚線維化の抑制に関与していることもわかった。一方、MFG-E8ノックアウトマウスのMSC由来エクソソームを用いてMFG-E8の関与についての検討を行なったが、今回の検討では線維化抑制への関与は明らかにならなかった。 本研究により強皮症の皮膚硬化に対するMSC由来エクソソームの治療応用が示唆された。
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