研究課題/領域番号 |
20K08688
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室 慶直 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80270990)
|
研究分担者 |
河野 通浩 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (60319324)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ADAR1 / 間質性肺炎 / 自己抗体 / 全身性エリテマトーデス / 皮膚筋炎 |
研究実績の概要 |
近年、皮膚筋炎においては多数の自己抗体が同定され、病型分類の優れたバイオマーカーとなっている。また、その病態にI型インターフェロン(IFN)が大きく関与することもわかってきた。RNA編集の機能分子であるADAR1 (adenosine deaminases acting on RNA 1)は、遺伝性対側性色素異常症や、I型IFN関連疾患のAicardi-Goutieres syndrome症候群の責任遺伝子であるが、本研究では、皮膚筋炎をはじめとする各種膠原病にADAR1に対する自己抗体が存在するのかについて、簡便な測定法を確立し、陽性例をスクリーニングすることをまずは試みた。 ADAR1に対するモノクローナル抗体は、HEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法において、核質の染色を弱く伴う核小体パターンが優位の染色像であったことから、当科の保存血清の中から、22例の強皮症患者、10例の全身性エリテマトーデス患者、8例の皮膚筋炎患者について抗体の有無を調べた。方法は、ADAR1の全長cDNAを用いたin vitro転写翻訳系により産生したリコンビナントタンパクによるELISAを応用した。 結果として、1例の皮膚筋炎と1例の全身性エリテマトーデスの患者に同抗体陽性例が見いだされた。抗体価が高かった皮膚筋炎例は、他の筋炎特異抗体の併存を認めず、比較的進行性の間質性肺炎を伴っており、抗ADAR1抗体の検出は臨床的にも有用である可能性が示された。なお、本自己抗体の報告は世界で初めてである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADAR1タンパクに対する血清中自己抗体の測定系として、ELISAを確立できた。さらに、このELISAを利用して、抗ADAR1抗体を有する皮膚筋炎患者1例と全身性エリテマトーデス1例を見出すことができた。本自己抗体に関する発表は世界で初めてである。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに多数の各種膠原病患者血清を用いて、抗ADAR1抗体を有する患者のスクリーニングを続けると共に、抗原プロセシングおよびMHCクラスⅡによる抗原提示において機能する分子で、ADAR1の作用により発現が上昇することが報告されているCathepsin Sの患者血清中の定量測定を行う。ADAR1抗体、Cathepsin Sとの病態との関連を探ることにより、筋炎やエリテマトーデスにおけるADAR1自己免疫応答の病態意義について検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に患者血清中の抗ADAR1抗体をELISAでスクリーニングし、陽性例を見出したが、本抗体に対する特異性をさらに調べるために、ADARが局在する核小体における他の数種自己抗体の調査に一部困難を生じた。そのため、予想した結果が得られなかったため、他の多数検体を調べる実験に進めず、未使用額が生じた。未使用額は、他の抗原タンパクのcDNAの購入やタンパク発現キットの購入にあて、予定した各種実験を行い、その成果発表のために使用する。
|