研究課題/領域番号 |
20K08690
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
橋本 登 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (90712365)
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研究分担者 |
加納 史也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (40801626)
杉浦 一充 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70335032)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症性皮膚疾患 / Atopic dermatitis / 乳歯歯髄幹細胞培養上清 / Siglec-9 / マクロファージ / CD4+T細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト歯髄幹細胞培養上清(SHED-CM)において同定された分泌型Siglec-9(sSiglec-9)による炎症性皮膚疾患に対する抗炎症・皮膚バリア再生効果を検討するために 以下の検討を行った。 卵白アルブミン(OVA)誘導アトピーマウスに対しsSiglec-9の尾静脈投与をおこなった。その結果、sSiglec-9投与群では対照群に比べ、皮膚の肥厚や肥満細胞の誘導を抑制し抗炎症効果があることが示された。sSiglec-9を含有するSHED-CMをアトピーマウスに投与し、二次リンパ組織である脾臓の解析を行った。炎症時にはリンパ小節において胚中心が見られ、免疫系の細胞の成熟化が起こる。SHED-CM投与マウスでは対象群に比べ胚中心の形成が抑制されていた。また、CD4+細胞(CD4+T細胞)の局在に変化が見られた。このことからSHED-CMは炎症部だけではなく二次リンパ組織に対しても抗炎症効果を示すことが示唆された。 結合時におけるsSiglec-9薬理活性の解析を行った。 sSiglec-9が炎症系M1マクロファージの活性制御を示すことがわかっている。Siglec-9のリガンド糖鎖キャリアタンパクの同定を行うためにLC/MSによる網羅的解析を行った。マクロファージ様細胞RAW264.7に対しSiglec-9-Fcを用い免疫沈降を行いLC/MSに供した。この結果からSiglec-9特異的に結合する3つの分子を同定した。マウス骨髄由マクロファージに対し3分子に対する特異的な抗体を用いウエスタンブロッティングを行ったところ同様な結果が得られたことからこれら3分子はSiglec-9が特異的に認識するマクロファージに共通している分子であることが示唆された。これら3つの分子の意義を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Siglec-9結合タンパクの同定においても3つのタンパク質を同定した。現在それら3分子のマクロファージにおける機能を解析しており、Siglec-9結合による機能分子を見出すことで炎症性皮膚疾患の新規制御法の創出 ができる可能性が高い。Siglec-9のターゲット細胞の同定を進めている。T細胞、マクロファージ共に炎症発症時に特徴的にSiglec-9の結合性が亢進することが分かった。特にマクロファージでの結合がより強くなることから、単球系の細胞により強く関与することが示唆されている。マウス生体内においてT細胞に対しても影響を示したことから、単離したT細胞への影響を見る計画だった。しかしながら培養系の樹立に時間がかかったため評価に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚バリアの維持にはFilaggrinの正常な発現が寄与している。sSiglec-9投与マウス表皮のFilaggrin 発現をreal time PCR法および抗体染色により解析する。 TNFaやIFNgによりHaCaT細胞のThymus and activation regulated Chemokine (TARC)が誘導される。TARCの発現は皮膚バリアの崩壊につながる。sSiglec-9がTARC 発現抑制可能かどうかを検討する。その際、Filaggrin以外の皮膚バリア因子であるTight Junction関連分子の発現解析も行う。 これまでの研究によりSiglec-9とマクロファージをはじめ単球系細胞に対する機能制御が主となっていることが示唆されている。皮膚炎においてsSiglec-9は種々の炎症性サイトカインを抑制していることはわかっているが、マクロファージの極性の変化、他の単球系への影響、ヘルパーTの分化制御はまだ不明瞭な点が多い。ヘルパーT細胞への影響は脾臓の解析の結果から示唆されている。T細胞の活性、クラスの変化に注目し解析していく。さらに、B細胞、好中球、樹状細胞、肥満細胞、表皮細胞は皮膚炎において病態関連の細胞であり、sSiglec-9の標的になりうるため解析する必要がある。 sSiglec-9のマクロファージとT細胞制御、さらにB細胞や樹状細胞、表皮細胞等への影響を体系的に解析し、細胞上の結合分子および作用メカニズムを明らかにする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)T細胞の培養系の樹立に時間を要した。また、それらを評価するには実験動物の誘導が必要になる。 (使用計画)次年度は主にT細胞や樹状細胞への影響を中心に解析していく。次年度研究費(皮膚炎モデルマウスに対するSiglec-9の作用機序の解明)と合わせた使用計画である。
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