研究課題/領域番号 |
20K08696
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
多田 弥生 帝京大学, 医学部, 主任教授 (00334409)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 乾癬 |
研究実績の概要 |
T細胞にはナイーブT細胞とmemory T細胞があり、抗原特異的な免疫記憶に関与するmemory T細胞が生体内の組織に分布している。Memory T細胞はその動態、機能上の違いから、いくつかのサブタイプがあることが分かっている。その中の一つに、一旦組織に移行した後CD69やCD103などのretention markerを発現し、再度循環に戻ることなく組織に留まり続けるresident memory T細胞(TRM)が知られている。皮膚においてもTRMの存在が知らており、免疫防御に重要な役割を果たしている。乾癬においても、ヒトの病変表皮にIL-17を産生するCD8陽性CD103陽性CD49a陰性TRMの存在が確認されており、病態への関与が示唆されているが、詳細な機序は未だ不明である。我々は、乾癬モデルマウスの表皮においても同じ特徴を持ったTRMを確認することに成功したため、この細胞が乾癬の病態にどのように関与しているのかを明らかにすべく研究を進めている。野生型マウスにイミキモドを連日(6日間)外用し乾癬皮疹を誘導後、外用を中止した。各タイムポイントにおいて免疫組織学的に寛解皮膚の表皮に浸潤する細胞(TRMを含むT細胞、樹状細胞、単球、好中球)の数を検討したところ、日数が経過するにしたがってTRMの増数をみとめた。PBSで希釈したnormal serumと室温30分間反応させ、非特異的な染色をブロックする。切片は次いでT細胞のマーカーCD3、樹状細胞のマーカーCD11c、単球のマーカーのマーカーCD11b、マクロファージのマーカーでF4/80で染色した。いずれの細胞も皮疹の形成とともに増数傾向を認めた。またTRMの検討においては、CD4、CD8、CD49a、CD69、CD103などで染色し、ヒトのTRMと同様の染色パターンを認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イミキモド外用により誘導した乾癬モデルマウスの表皮内において、再現性をもって、TRMの存在の確認できた。表面抗原の染色についても一定の染色パターンを常に示しており、今後細胞の機能解析を行う目処もついた。コロナ禍においても、動物実験施設の使用、動物の搬入、実験試薬の確保についても問題なく遂行できており、概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年はTRMのin vitroでの機能解析を進めていく。具体的には寛解皮膚からディスパーゼを用いて表皮と真皮を分離した後に、表皮と真皮別々に細胞を分離し、IL-23、TNFα、または抗菌ペプチドなどの投与下で培養し、TRMのIL-17、IL-22、IFN-γなどの産生をフローサイトメトリーで測定する。IL-17産生誘導なIL-23のソースの検索については、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト、樹状細胞を候補細胞として、フローサイトメトリーや免疫染色で検索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼゼロであり、148円は端数と考える。次年度に繰り越して使用する。
|