研究課題/領域番号 |
20K08702
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
原 孝彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 分野長 (80280949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CXCL14 / TLR9 / CpG DNA / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
まず初めに、CXCL14とCpG DNAとの結合様式を最終証明し、原著論文として発表した。
次に、CXCL14と皮膚常在菌との関係を詳しく解析した。CXCL14は皮膚ケラチノサイトから大量に産生されている。CXCL14は非メチル化CpG DNAと結合して樹状細胞内へ運び込むことでTLR9自然免疫系を活性化する。この活性と合致して、CXCL14は黄色ブドウ球菌のDNAと特異的に結合し、それを樹状細胞内へ運び込むことでTh1サイトカインの分泌を誘導していることが明らかになった。さらに、野生型マウスとCXCL14-KOマウスの耳内に黄色ブドウ球菌を接種したところ、24時間後の総菌数はCXCL14-KOマウスの方が有意に多くなっていた。皮膚におけるCXCL14の発現レベルは日内変動しており、マウスでは昼間に高く、夜間に低くなっていた。これらの事実から、CXCL14は休眠期の皮膚で黄色ブドウ球菌のような常在菌が過増殖しないよう監視する役割を果たしていると推察される(論文印刷中)。
最後に、CpG DNA-CXCL14複合体に対する受容体分子の解析を進めた。受容体Aは、CpG DNA-CXCL14-TLR9経路を負に調節する受容体である。ヒト樹状細胞株CAL-1での実験結果と合致して、A遺伝子KOマウスから調製した樹状細胞では、CpG DNA反応性が野生型マウス由来の樹状細胞より有意に亢進していた。一方、促進性受容体候補として同定した受容体Cについては、KOマウス由来樹状細胞のCpG DNA反応性は野生型マウスと変わらなかった。そこで、Cと構造的に類似している膜タンパク質を探索した結果、CpG ODNと結合する別の分子Eを同定した。従って、Cに関しては、機能的重複性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、I. CXCL14によるCpG DNA結合の分子基盤・特異性、II. 皮膚の免疫監視に必須なCpG oligodeoxynucleotides (ODN)-CXCL14受容体、III. 脂肪代謝におけるCXCL14の生理的役割、という3つの解明目標を設定して研究を進めてきた。1つ目の課題については、CpG ODNとCXCL14の特異的結合の構造的基盤を解明し(論文発表済み)、CXCL14が黄色ブドウ球菌DNAと相互作用することを証明した(論文印刷中)。次に、2つ目の課題については、研究対象である4種類のCpG ODN-CXCL14受容体候補分子A, B, C, DのKOマウスを用いて、樹状細胞とマクロファージに高発現している膜タンパク質Aが、CpG DNA-CXCL14-TLR9経路を負に調節する受容体であることを証明し、Cには類似の機能を持つ膜タンパク質Eが存在することを見出した。最後に、3つ目の研究課題については、A遺伝子のKOマウスやKO細胞を用いて最終年度に実験を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
CpG ODN-CXCL14受容体AのKOマウス、ヒトCAL-1 KO細胞を用いて、膜タンパク質Aが皮膚の常在菌ホメオスタシス、皮膚癌に対する免疫、そして脂肪代謝とどのように関わっているのかを検証していく計画である。受容体Cについては、ファミリー分子や機能類似分子Eとの構造比較によって、CpG DNAとの結合や細胞内取り込みに必要な機能ドメインを丹念に調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたA遺伝子KOマウスを用いた癌細胞移植実験の一部が、マウスの繁殖スケジュールの都合によって実施できなかった。この実験に必要な物品費を、次年度に持ち越すことにした。具体的には、コントロール用の野生型マウスと追加のCpG ODNを次年度購入することとする。
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