研究課題
移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)は同種造血細胞移植後に発症する重篤な合併症の一つであり、治療には副腎皮質ステロイド剤が用いられるが約半数は治療抵抗性を示し、その場合の予後は著しく不良である。この病態はステロイド不応性GVHD(steroid refractory/resistant GVHD:SR-GVHD)と呼ばれ現在も標準治療がない。同種造血細胞移植の予後改善には、SR-GVHDの病態解明が不可欠であり、病態に即した予防・治療法の開発が急務である。本研究の最終年度は、NLRP6のステロイド不応性GVHD発症における影響を、T細胞に焦点を当てNLRP6を欠損させた場合の影響を解析した。我々は、NLRP6欠損マウス由来のドナーT細胞は、同種免疫反応(アロ反応)及び非特異的T細胞受容体刺激に対して、野生型由来マウスT細胞と比較して著しい亢進することを確認している。今回、マウス骨髄移植モデルにおいてNLRP6欠損T細胞を輸注すると、急性GVHDが悪化すし、これがT細胞固有の反応であることを、多系統のマウスモデルで明らかにした。また、移植後のドナーT細胞動態解析では、NLRP6欠損マウス輸注群で、ドナーT細胞の増殖や活性化、炎症性サイトカインの産生増加を認めた。T細胞活性化機構の詳細機序を検討するために、種々の免疫学的解析手法を用いたところ、NLRP6欠損T細胞では刺激に応じてDNA合成及び細胞分裂が増加しており、NLRP6はT細胞活性化シグナリングではZAP-70の上流で、ZAP-70/Erk経路を特異的に制御していることを発見した。本研究の結果は、NLRP6が多彩な免疫機能を持つことを改めて示し、T細胞活性化機構への関与が明らかとなった。本経路を特異的に阻害することで、ステロイド不応性GVHDに新たな治療法の開発が期待される。
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