研究実績の概要 |
①遺伝子Xノックアウト後のヒト臍帯血由来造血幹細胞の2次移植;1次移植後の骨髄細胞から、フローサイトメーターを用いて、ヒトCD45陽性細胞を分取し、75,000個、150,000個、600,000個/マウスで限界希釈法による2次移植実験を行ったところ、造血幹細胞の頻度がコントロールと比較し、有意に低下していることを確認した。また、ヒトCD45陽性細胞のキメリズムの低下を認めた。白血病化はみられず、リンパ球系/骨髄球系の分化指向性はコントロールと比較して、有意な差はみられなかった。現在、2次移植の2回目を行い、再現性を確認している。 ②ヒト成人骨髄由来造血幹・前駆細胞のトランスクリプトーム解析;臍帯血由来造血幹・前駆細胞における遺伝子Xの発現パターンが、発生段階の異なるヒト成人骨髄由来造血幹・前駆細胞においても維持されていることを確認するため、フローサイトメーターにより骨髄由来造血幹・前駆細胞を6種類の分化段階に分けて採取し、RNAシークエンスを行った。その結果、臍帯血由来造血幹・前駆細胞における遺伝子Xの発現パターンはほぼ同じであり、発生段階を通じて、同様の効果を保持していることが示唆された。以上よりCTCF下流の遺伝子Xは造血幹細胞に最も高く発現し、shRNA法で抑制することで、HSCの骨髄再構築能が徐々に低下することから、この因子が造血幹細胞制御因子であることが示された。 ③白血病幹細胞、非幹細胞での遺伝子Xの発現解析;一方、興味深いことに、白血病幹細胞、前駆細胞に分けて解析した78例の白血病患者サンプルのRNAシークエンス解析のデータを再解析したところ(Ng SWK, Nature2016)、白血病幹細胞での特異的な上昇はみられず、正常造血幹細胞と白血病幹細胞で異なる役割を果たしている可能性が示唆された。
|