研究課題/領域番号 |
20K08708
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石山 謙 金沢大学, 附属病院, 講師 (60377380)
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研究分担者 |
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70217660)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再生不良性貧血 / トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA) / ロミプロスチム / 体細胞遺伝子変異 / クロナリティ / minute PNH顆粒球 |
研究実績の概要 |
トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)であるエルトロンボパク(EPAG)またはロミプロスチム(ROMI)が奏効した再生不良性貧血(AA)患者において、体細胞変異クローンの新たな出現またはクローンの拡大がみられるか否かを引き続き検討した。2年以上に渡ってTPO-RAを投与された31例の末梢血白血球を検討したところ、10例(32.3%)に、ASXL1、RUNX1変異を含む体細胞変異と染色体の構造異常が認められた。このうち、複数の体細胞変異を認めた1例と、ASXL1のフレームシフト変異を認めた1例は骨髄異形成症候群に移行したが、その他の症例では明らかなクローン進展は見られていない。この体細胞変異の検出頻度は、ヒストリカルコントロールと比べてほぼ同等であることから、体細胞変異クローンがTPO-RAによって拡大する可能性は低いと考えられた。 また、計画にはなかった最近の我々の研究により、0.003%未満の発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: PNH)形質の顆粒球(PNH型顆粒球)集団の存在が、造血不全の非免疫病態のマーカーであることが明らかになった。免疫病態が関与しない造血不全におけるTPO-RAの有用性を評価するため、このminute PNH顆粒球(mPNH顆粒球)とTPO-RAに対する反応性との関係を調べたところ、TPO-RAによって改善した15例の微少PNH型顆粒球陰性AA患者のうち、11例でmPNH顆粒球が検出された。したがって、TPO-RAは免疫病態によらない造血不全であっても造血を回復させる効果があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TPO-RA治療を受けた患者の末梢血・骨髄の採取と造血幹・前駆細胞(HSPCs)における遺伝子解析、HLAクラスIアレル欠失血球、HLA-A/Bアレルにおける機能喪失型変異の検出、mPNH型顆粒球検出による造血不全の病態診断などは実施中である。今後も症例数を増やす予定である。また、ロミプロスチムによるDSB抑制作用の検討に用いる患者検体は令和3年度までに収集しており、令和4年度に実施する予定である。免疫不全マウスにおけるヒト造血の再構築は、ヒト造血の生着が不良となっているため、現在移植条件の見直しを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
DNA二本鎖切断(DSB)の抑制作用がROMIにおいても認められるかどうかを明らかにするため、臍帯血CD34陽性(CD34+細胞)及びiPS細胞由来のCD34陽性細胞(iCD34+細胞)を対象としてX線照射によりDSBを誘導し、造血因子存在下の液体培養中に見られるdouble strand breakage (DSB)に対してROMIが抑制作用を示すか否かを明らかにする。また、体細胞変異が見られているTPO-RA反応性のAA患者については、今後も定期的に変異検索を行い、変異クローンの拡大がないかどうかを観察する。さらに、TPO-RAの有効性とminute PNH顆粒球との関係を症例数を増やして解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロミプロスチムによるDSB抑制作用の検討に用いる患者検体を令和3年度までに収集しており、令和4年度に実施する予定である。また、免疫不全マウスにおけるヒト造血の再構築は、ヒト造血の生着が不良となっているため、現在移植条件の見直しを行っている。これらの検証をR4年度に行うために助成金を使用予定としている。
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