研究課題
後天性の骨髄での造血障害により血球減少をきたす骨髄不全症候群は、再生不良性貧血や赤芽球癆を含む難治性の血液疾患群である。骨髄不全症候群ではリンパ球のT細胞が関与する細胞性免疫異常が重要とされ免疫抑制療法で治療されるが、免疫異常の詳細に関してはまだよくわかっていない。また、免疫抑制療法に抵抗性であったり、一時奏功しても再燃する例もあるがその予測因子も不明である。研究担当者は骨髄不全症候群の一部の疾患でT細胞にシグナル伝達分子のひとつであるSTAT3遺伝子変異を同定し、STAT3変異陽性例では免疫抑制療法に抵抗性の可能性があることを示したが、STAT3以外の遺伝子変異の有無や臨床的意義は明らかでない。以上の背景より、本研究では骨髄不全症候群におけるT細胞の遺伝子変異像の特徴を調べ、疾患や病像とどのような関係があるかを明らかにすることが骨髄不全症候群の病態解明や適切な診断・分類・至適治療指標の開発に有用と考えて実施している。現在までに骨髄不全症候群症例の末梢血から単核球を得て、亜分画を分取し全エクソン解析を行った。遺伝子多型を除外した後、症例ごとに数カ所の体細胞遺伝子変異と考えられる変異が認めた。共通の変異部位はこれまでのところ同定されていないがシグナル伝達経路、細胞周期関連分子などで変異候補となる分子を選定した。今後症例数を増やすとともに、遺伝子パネルを作成し検討する計画である。また、変異遺伝子がT細胞の機能や造血障害にどのように関与するかを調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
骨髄不全症候群症例から得られたT細胞亜群の全エクソン解析の手法は確認でき、実際のデータも得られている。細胞亜群および症例間での比較により変異遺伝子候補群をある程度絞りこんでおり遺伝子パネル作成に進める段階にある。以上より概ね順調に進展していると考えられる。比較的まれな疾患も含まれており、症例数の偏りが生じる可能性があることは予想される。
症例数を増やして全エクソン解析を行い、遺伝子パネルを作成、変異の確認を行う。また、多数例での遺伝子パネルによる検討をする。骨髄不全症候群の疾患による偏りには留意し、共同研究機関を含め引き続き症例数の増加に努力する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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