研究課題
ALアミロイドーシスの診断は、生検からホルマリン固定、免疫染色、質量解析など最終診断までに長時間を要する。特に心アミロイドーシスは難治性であり、診断に時間を要することで生命予後にも影響を及ぼすため、迅速な新規診断法の確立が喫緊の課題である。本研究では、難治性かつ診断に時間を要する造血器疾患の代表としてALアミロイドーシスを挙げ、ラマン分光法を用いた迅速な新規診断法の開発を目的とし、特に心臓アミロイドーシス(AL, TTR)の早期診断法の確立を試みる。AL,AA,TTRアミロイドーシスと診断されている患者の病理標本(パラフィン包埋)から薄層標本を作製し、ラマン分光法を用いて解析した。対象患者は10例で、男性7例、女性3例、年齢49-82歳(中央値70歳)、AL7例、TTR2例(野生型)、AA1例、アミロイド浸潤臓器は、心臓4例(AL2例、TTR2例)、腎臓2例、胃2例(AL2例、AA1例)、直腸2例、皮膚3例、まずCongo red染色陽性かつ偏光顕微鏡で緑色屈折をきたす部位を同定し、同部位を未染色サンプルで確認して、ラマンスペクトル解析を行った。検討したすべてのサンプルで、1680 cm-1付近にピークを認め、このピークに関しては、過去の検討からβシート構造に由来している可能性がある(ACS chemical Neuroscience 2018)また胃AAとALでは曲線の相違を認めた、臓器別では消化管(胃・十二指腸・直腸)のサンプルでは、他の臓器と比較して、1630-1650 cm-1に曲線の相違を認めた。しかし、心臓ALとTTRアミロイドーシス患者においては、ラマンシフトピークの相違は明らかではなかった。
2: おおむね順調に進展している
ALアミロイドーシスは稀少疾患であるが、今回10例の集積が可能であり、またALアミロイドーシスに比較的特異的なラマンシフトおよび臓器別のラマンシフトピークの相違を見出した。また並行してAAアミロイドーシス患者やTTR型アミロイドーシス患者の検体を用いた検討を行っており、ALアミロイドーシスとの比較検討も進んでいる。
Congo red染色以外のアミロイド染色用色素であるダイレクトファーストスカーレットやチオフラビンTなどを用いて、前述の薄層標本を染色し、異なる試薬で染色した同一アミロイドーシス検体間の比較によりALアミロイド線維に特異的な変化をラマンスペクトル解析にて検討する。特に心臓アミロイドーシスに関して、ALとTTRとの判別が可能な解析法を導き出す。そしてCongo red染色による偏光とラマン分光を合体させたALアミロイドーシスの迅速病型確定診断の樹立を試み、将来的には生標本を用いた無染色組織イメージングを目指す。
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10.1002/jha2.402