研究課題
原発性骨髄線維症(PMF)患者に対する臨床的な有効な新規キメラ型抗原受容体遺伝子を用いる細胞免疫療法の開発を進めている。PMF患者に多く見られるCALRの遺伝子変異(CARLmut)とHLA-DRとの複合体を認識する特異抗体の作成し、一本鎖抗体を作成すべく、可変領域の解析を行っている。また、加えて、CARLmutとトロンボポエチン受容体であるMPLとの複合体の細胞細胞外ドメイン部分の配列を同定し、その部位を特異的に認識する特異抗体の作成を行っている。この特異抗体についても、一本鎖抗体の作成を目的として抗体の可変領域の解析を行い、我々が報告した変領域の組み替えの技術を用いて、抗原に対し、より親和性、特異性の高い可変領域へのオプティマイズを行っている。この可変領域とT細胞内の活性化ドメインの遺伝子を一本鎖とし、作成した一本鎖抗体をT細胞内へ遺伝子導入し、発現抗原に対するT細胞の反応をサイトカイン産生能、標的細胞に対する殺細胞効果で評価し、より有効な可変領域への改良を行っている。さらには、この抗原認識部位とT細胞を認識する部位とを一本鎖として作成したbispecific T-cell engager(Bite)の開発も行っている。他の造血器腫瘍に対する実験系を用いて、このBiteが腫瘍細胞に特異的に結合し、T細胞との反応において、腫瘍細胞、Bite、T細胞を共培養した実験系において、T細胞によるサイトカインの産生が増加することを報告した。
3: やや遅れている
現在作成を行っているCALRmutとHLA-DRに対する抗原の親和性、特異性をさらに高め、より有効な特異抗体の作成を行っているが、CALRmut-MPL複合体に対する抗体も併せて作成している。それぞれの新規特異的抗体の可変領域の改良を行い、一本鎖抗体を作成する作業に時間を要している。また、CALRmut-CAR-T細胞の作成ならびにその機能を評価するK562細胞をベースとした人工抗原提示細胞を用いた拡大培養系によるメモリー細胞形質を持ったCALRmut-CAR-T細胞の安定した作成に時間を要しているため、メモリーCAR-T細胞の抗原認識能、細胞障害活性を、in vitroにて確認する作業や、CALRmut/HLA-CAR-T細胞の機能評価としての標的細胞に対するアフィニティーやインターフェロン産生能、インターロイキン2産生能等、標的細胞特異的な反応の確認がまだ行えていない。CALRmut-MPL-CAR-T細胞に関しても同様に機能的安定性と抗腫瘍効果の評価がまだ行えていない。さらに新規に作成したCARLmutを認識する Biteに関しては、抗原発現細胞に対するT細胞、NK細胞の反応の特異性、類似する抗原に対する交差反応性等の検証を行っている段階である。
マクロファージ完全寛容を導入した次世代PDXモデルを用いて、PMFのるマウスモデルを作成し、作成したCARLmut-CAR-T細胞をエフェクター細胞として輸注してPMF マウスにおけるCALRmut を有する腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果と残存しているCALRmut/HLA-CAR-T細胞数とその疲弊マーカーを含む表面形質、CALRmut遺伝子発現細胞応答性を詳細に検討する。さらにメモリー形質を獲得させたCALRmut/HLA-CAR-T細胞がマウス体内でCALRmut遺伝子発現細胞を認識後に腫瘍抗原特異的メモリーT細胞として機能するか否かをin vivo imaging等を利用して詳細に検討する。PMFに対する新規細胞免疫療法の実用化へ向けたin vivoでの前臨床試験をさらに進め、メモリー機能を持つCALRmut-CAR-T細胞の特性化を進め、長期間に渡って異常クローンであるCALRmut細胞を監視できる免疫応答を輸注成立させることで、PMFに対する細胞免疫療法のゴールを目指す。さらに新規に作成したCARLmutを認識する Biteを用いて、抗原発現細胞に対するT細胞、NK細胞の反応の特異性、類似する抗原に対する交差反応性等の検証を行い、臨床への応用を目標として、本プロジェクトを進行する。
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Annals of Hematology
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10.1007/s00277-020-04151-x