研究実績の概要 |
悪性リンパ腫の発症には、ウイルス感染やそれに伴う慢性炎症が関与することが多い。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)の中でもDLBCL associated with chronic inflammation(DLBCL-CI)というカテゴリーが設けられている。DLBCL-CIの多くはEpstein-Barr ウイルス(EBウイルス)感染を伴い、そのウイルス感染と長期的な慢性炎症が腫瘍の発生と密接に関連する。 DLBCL-CIの代表として膿胸関連リンパ腫(pyothorax-associated lymphoma, PAL)がある。一連のPAL細胞株を使っての解析の結果、PAL細胞はケモカインCXCL9、CXCL10遺伝子を強く発現し、これらケモカインを分泌することが明らかになった。PAL病理組織での免疫染色法での結果においても、EBウイルス陽性PAL細胞はCXCL9、CXCL10を発現することが確認できた。 CXCL9/CXCL10を発現するPAL細胞はこれらケモカインの受容体であるCXCR3を発現するCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞およびCD56陽性NK細胞を引き寄せることがin vitroおよびマウスにおけるin vivo実験で明らかとなった。PAL病理組織においてもCXCR3発現するCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞およびCD56陽性NK細胞の浸潤が確認できた。 これらの結果は、PAL細胞がケモカインCXCL9とCXCL10を分泌することによりCXCR3陽性腫瘍傷害性リンパ球を腫瘍部位に引き寄せることを示唆しており、誘引された腫瘍傷害性リンパ球によってリンパ腫細胞を排除できる可能性を示している。このことを活用することによりEBV陽性DLBCL-Cの新規治療法につながることが期待される。
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