研究課題
本研究では、DNA損傷修復に関わるDNAリガーゼIV(LIG4)の低形成性変異を導入したマウス(Lig4W447Cホモ変異マウス)に生じた炎症性腸疾患の分子基盤、細胞生物学的基盤を明らかにすることを目的とした。これまでに、Lig4W447Cホモ変異マウスにおいて、DNA損傷修復障害、獲得免疫不全が生じること、さらには、IFN-γを産生するTh1細胞を主体とする炎症性腸疾患を発症することを見出した。今年度は、このホモ変異マウスに生じたユニークな炎症病態の解析を継続し、いくつかの結果を得ることができた。1)Lig4W447Cホモ変異マウスとRag2欠損マウス(リンパ球欠失マウス)とのダブル変異マウスを作成した。このダブル変異マウスでは、完全に炎症を消去でき、長期生存した。Lig4W447Cホモ変異マウスの腸炎はリンパ球依存性であることを見出した。2)Lig4W447Cホモ変異マウスの腸炎発症には、IFN-γが鍵となるサイトカインと考えられた。そこで、IFN-γ欠損マウスを作成し、Lig4W447Cホモ変異マウスとのダブル変異マウスを作成した。このダブル変異マウスでは、Lig4W447Cホモ変異マウスと同じく、大腸を含めた全身性の炎症が認められた。一方、FACS解析やRNA-Seq解析より、この炎症はTh17細胞がドミナントな表現型であった。IFN-γを欠損させることで、炎症病態がTh1型からTh17型に移行することを見出した。3)野生型マウスとLig4W447Cホモ変異マウスの脾臓で、シングルセル解析とTCRレパトア解析を行った。シングルセル解析より、変異マウスでは、IFN-γを産生するTh1細胞がドミナントであることを見出し。さらに、TCRレパトア解析より、ホモ変異マウスでは、TCR遺伝子のclonotypeの著明な減少とoligoclonalなTCRの候補を見出した。
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