研究課題/領域番号 |
20K08722
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
奥田 博史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 外来研究員 (10629215)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白血病 / MLL-AF4 / 発現制御 |
研究実績の概要 |
がん遺伝子MLL-AF4はt(4;11)転座によって生じ、乳児急性リンパ性白血病の約80%の症例で認められる。本転座を持つ白血病は予後が非常に不良であり新規治療法の開発が強く望まれている。しかしMLL-AF4を外因的に発現させるのは困難であることが知られており、本疾病の発病メカニズムの解析は大きく遅れている。申請者はMLL-AF4が転写後制御を受けることで遺伝子発現しないことを発見した。そこで本研究ではがん遺伝子MLL-AF4の転写後制御による発がん抑制機構を解明している。研究計画1年目において、MLL-AF4の不活性化制御に関わる因子の同定とそのメカニズム解析を行った。様々なMLL-AF4の変異体解析によってMLL-AF4の不活性化領域を特定し、その領域に特異的に結合するRNA結合タンパク質を同定した。さらに、CRISPR-Cas9システムを用いてMLL-AF4発現抑制因子の候補遺伝子をノックアウトすることで、MLL-AF4の発現抑制が解除される表現型を探索した結果、いくつかのRNA結合タンパク質のノックアウトにてMLL-AF4の発現抑制が解除され、MLL-AF4のタンパク質が検出された。さらにこのRNA結合タンパク質のノックアウトすることによってMLL-AF4がマウス骨髄前駆細胞を不死化できるようになった。このことによって、いくつかのRNA結合タンパク質がMLL-AF4の発現制御にかかわっていることが明らかとなった。今後さらにMLL-AF4とRNA結合タンパク質のノックアウトの組み合わせ細胞がマウスにおいて白血病を引き起こすことができるのか検討する。本研究成果はこれまで不可能であった簡便なMLL-AF4の研究モデルを構築し、MLL-AF4の発病メカニズムの解析や薬剤創製の基盤となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は研究期間内に達成するべき2つの目標のうち1つであるMLL-AF4の不活性化制御に関わる因子の同定が概ね達成できた。申請者はMLL-AF4の不活性化領域のRNAオリゴを用いてIPすることでMLL-AF4の不活性化領域に結合する特異的なRNA結合因子を同定した。さらに、マウス骨髄前駆細胞にMLL-AF4やその変異体およびいくつかの同定したRNA結合因子のノックアウトベクターを組み合わせて導入すると、MLL-AF4単独では不死化することができなかった骨髄前駆細胞が不死化できるようになった。このことから、MLL-AF4の発現制御に関わるRNA結合因子を同定できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は申請書の計画通り、なぜMLL-AF4が患者検体で見られるにもかかわらず、外因的に導入しようとすると不活性化して細胞を癌化できないのか、その理由を模索する。はじめに、同定したRNA結合因子がどの細胞系列で不活性化状態であるのか、発現パターンをデータベースにある既存の白血病患者検体のトランスクリプトームデータと照らし合わせる。また、MLL-AF4とRNA結合因子のノックアウトベクターとの組み合わせで細胞を不死化することができたが、マウスにおいて白血病を引き起こすことができるのか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究には申請時にすでに購入した試薬等で申請者が計画していた研究成果が出たこともあり、1年目の使用額が研究計画より少額になった。今年度は、研究代表者が横浜市立大学に異動したこともあり、必要な試薬等をそろえる必要もあり、使用額が増えると考えている。よって、結果的に初年度の未使用額とともに2年目の研究に用いる。
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