研究課題
難治性白血病であるフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)併用で深い寛解が得られるようになったが、わが国では第一寛解期での同種造血幹細胞移植が標準治療と考えられている。同種造血幹細胞移植は同種免疫により根治を望める一方で、移植片対宿主病に代表される特徴的な合併症による長期にわたる生活の質の低下や移植関連死亡が一定の割合で発生する強力な治療法であり、同種移植を行わなくても予後良好な患者層を明確にする必要がある。わが国の代表的な白血病研究グループである成人白血病治療共同研究支援機構(JALSG)でTKI登場後にPh+ALLを対象としてJALSG Ph+ALL202試験、Ph+ALL208試験、Ph+ALL213試験の3つの臨床試験が実施されてきたが、同種造血幹細胞移植の詳細なデータは日本造血細胞移植学会/日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)の移植登録一元管理(TRUMP)データベースで別に管理されており、Ph+ALL治療の全体を1つのデータベースで把握できていない。そこで、JALSGの3つの臨床試験データとTRUMPにある同種造血幹細胞移植データを統合してPh+ALLの治療全体が把握できるデータを解析する付随研究(JALSG Ph+ALL TKI-SCT試験)を立ち上げた。JALSG、JDCHCTおよび研究代表者所属施設の倫理委員会で承認され、JALSGの3つの臨床試験に患者登録のある参加施設の倫理委員会での承認手続きを進めている。また、予後因子の新たな解析方法の探索もすすめており、機械学習の手法を用いることで、人間の手で因子の取捨選択を行う従来の統計学手法では見つけにくい因子の同定方法の検討も進めている。
3: やや遅れている
研究代表者所属施設の倫理委員会承認に数か月の期間を要し、他の参加施設へ倫理審査を依頼できる時期が遅くなったことから、まだ、すべての施設の倫理委員会の承認が得られておらず、TRUMPデータとの統合作業が遅れているため。
具体的な期限を定めて各参加施設での倫理審査を依頼しており、依頼後は順調に各施設での承認が得られている。今年度前半には予定施設での倫理審査を終了し、その後にJALSG臨床試験データとTRUMPデータの統合をJDCHCTにて進める予定である。今年度中には解析可能な統合データセットが利用可能となる予定である。今回使用するデータセットとは別の研究で使用しているデータセットを用いて解析方法等の検討を並行して実施する予定であり、統合データセットが利用可能となり次第、速やかに解析を進められるように準備しておく予定である。
研究代表者所属施設での倫理審査に数か月を要し、他の参加施設への倫理審査の依頼時期が予定より遅れたため、今年度内にJDCHCTにいてJALSG臨床試験データとTRUMPデータの統合作業が実施できなかった。来年度前半には各施設での倫理審査を終了し、その後にJDCHCTでのデータ突合作業を行う予定であり、従来の予定通りその費用として使用する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Biomarker Research
巻: 9 ページ: 13
10.1186/s40364-021-00268-x
Blood Advances
巻: 5 ページ: 584-592
10.1182/bloodadvances.2020003536