研究課題
わが国の代表的な白血病研究グループである成人白血病治療共同研究支援機構(JALSG)でチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)登場後にフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)を対象として実施されたJALSG Ph+ALL202試験、Ph+ALL208試験、Ph+ALL213試験の3つの臨床試験データと日本造血・免疫細胞療法移植学会/日本造血細胞移植データセンターの移植登録一元管理(TRUMP)データベースで管理されている同種造血幹細胞移植の詳細なデータを統合し、Ph+ALLの治療全体が把握できるデータベースを構築して解析を実施する付随研究(JALSG Ph+ALL TKI-SCT試験)を実施した。初発のPh+ALL206例中131例(63.6%)でフィラデルフィア染色体以外の付加的染色体異常を認め、構造異常では+der(22)t(9;22)が最も高頻度であった。+der(22)t(9;22)43例のうち67.4%は染色体異常が3つ以上存在する複雑核型が併存しており、併存例では有意に生存率が不良であった(5年全生存率:33.4% vs. 62.7%, P=0.0003)。血液学的、分子学的な完全寛解達成率に両群で差を認めなかったが、併存例では再発までの期間が短いという特徴がみられた。多変量解析では、+der(22)t(9;22)、複雑核型単独では有意な因子とならなかったが、両者の併存が生存に対する有意なリスク因子となった。全体では第二世代TKIであるダサチニブ投与例でイマチニブ投与例より治療成績が良好であったが、+der(22)t(9;22)と複雑核型の併存群ではダサチニブ投与による治療成績の改善は認められなかった。この研究により、+der(22)t(9;22)と複雑核型の併存がPh+ALLにおける有意な予後因子であることが示された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
eJHaem
巻: - ページ: -
10.1002/jha2.677
HemaSphere
Blood Advances
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