研究課題/領域番号 |
20K08733
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細川 健太郎 九州大学, 医学研究院, 講師 (90569584)
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研究分担者 |
新井 文用 九州大学, 医学研究院, 教授 (90365403)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 造血幹細胞 / 転写因子 / 分化制御 / ニッチ |
研究実績の概要 |
これまでに申請者は、骨髄内の様々な造血ニッチ細胞のうち、レプチン受容体陽性間葉系幹細胞(Lepr+MSC)に特異的にフォークヘッド転写因子Foxp2が発現することを見出した。このFoxp2がLepr+MSCニッチ細胞においてどのような機能を持つのかを明らかにするため、Lepr陽性細胞特異的Foxp2欠損マウスの解析を行ってきた。2021年度は、遺伝子発現の動きから表現型を理解するため、Foxp2欠損マウス由来Lepr+MSCに関してRNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。このことにより、これまで得られていたMSCに関する表現型を遺伝子発現の面から裏付けることができた。すなわち、MSC自体の細胞周期や代謝の活性化が見られ、さらに分化ポテンシャルに偏重が見られたことを明らかにした。また、造血制御に関わる分泌因子のうち、欠損群で特異的な挙動をして造血幹細胞(HSC)への影響の原因候補遺伝子のリストを得ることができた。一方で、MSCにおけるFoxp2の機能のうち、造血支持能への影響を明らかにするため、欠損マウス由来HSCについてもRNA-seq解析と逆移植を行って表現型との関連を検証した。遺伝子発現解析の結果、やはり以前得られていた造血幹細胞/前駆細胞における表現型を支持する結果を得ることができた。すなわち、造血幹細胞の分化促進と細胞周期・代謝の活性化を明らかにすることができた。また、逆移植においても、定常時と同様の表現型を示し、やはりMSC特異的なFoxp2欠損がHSCの造血支持能に影響することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は欠損マウスを用いてMSCおよびHSCの遺伝子発現を比較し、これまでに得られていた表現型に対する結果を裏打ちすることができた。またMSCからの分泌因子には特徴的な発現変化が見られており、これが造血支持能に対して大きく影響することが予想された。今後はこれらの因子の機能がマウスでの表現型に合致するものであるかを明らかにしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、Foxp2欠損マウスの表現型であるHSCの代謝の変化や分化の偏重の原因となる因子を特定するため、転写因子Foxp2の結合標的に対するChIP-seqを行って、既に実施したRNA-seqの解析結果から得られた差次的遺伝子の情報と合わせて、重複する因子の抽出を行う。さらに得られた候補因子のうち、液性因子の場合は造血幹細胞の培養下において添加することで前述の表現型を再現する。また接着因子の場合も、候補分子を培養器底部にコーティングして培養することで起こる変化を解析し目標であるFoxp2の標的因子の特定を行う。その後は、特定された標的因子に関する欠損マウスの導入とその解析を進めることで、分子伝達経路の全容を解明していきたいと考える。
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