研究課題
本研究は、DIS3の造血における機能を明らかにするとともに、DIS3欠損を含むヒト骨髄腫遺伝学的異常に基づく骨髄腫モデルマウスを確立することを目的としている。骨髄腫における高頻度反復変異の一つとしてDIS3変異が同定されており、また、約40%の骨髄腫症例では13番染色体の欠失に伴ってDIS3遺伝子のヘテロ欠損が認められる。しかしながら、DIS3の造血における生理的機能や骨髄腫におけるDIS3欠損の意義は未だ不明である。そこで、Dis3-floxマウスを作製した後、Mx-Creマウスと掛け合わせることで造血細胞特異的Dis3ノックアウトマウスを作製した。また、Cgamma1-Creマウスと掛け合わせることで胚中心B細胞以降のB細胞特異的Dis3ノックアウトマウスを作製した。造血細胞特異的Dis3ノックアウトマウスでは著しい造血不全を認め、Dis3は正常造血に必須の遺伝子であることが判明した。一方で、晩期B細胞特異的Dis3ノックアウトマウスからは形質細胞性腫瘍の発症は認めなかった。さらに、晩期B細胞特異的Dis3ノックアウトマウスにc-MAF-IGH転座モデルマウスを掛け合わせたマウスも作製したが、形質細胞性腫瘍の発症は認めなかった。本研究により、造血におけるDIS3の重要性が明らかになるとともに、DIS3欠損単独やc-MAF転座との組み合わせのみでは骨髄腫発症には至らないことが示された。今後、DIS3が造血を維持する分子基盤を解明していく予定である。
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