研究課題
HBV既往感染歴を有する造血器腫瘍治療後のHBV再活性化に対し、定期的なHBV DNAモニタリングに基づく核酸アナログ先制治療により関連する肝障害予防は可能になったが、核酸アナログの中止規準は確立されていない。今回、名古屋市立大学病院にて2008年から2020年までに、HBV既往感染歴を有する造血器腫瘍患者27例のHBV再活性化後の保存血清を用いて、高感度HBコア関連抗原(iTACT-HBcrAg)を測定し、その有用性をレトロスペクティブに検討した。高感度HBコア関連抗原のカットオフは2.0 Log U/mLとし、同時にHBsAg-HQ、HBs抗体を測定した。HBV再活性化を診断した際のHBV DNA量の中央値は1.8 log IU/mL(ピークの中央値は2.0 log IU/mL)で、全例が核酸アナログを投与され、HBV再活性化関連肝障害を認めなかった。HBV再活性化後のiTACT-HBcrAgおよびHQ-HBsAgの陽性割合はそれぞれ96%、52%であった。核酸アナログ治療開始時点でiTACT-HBcrAgが検出された25例中、17例(68%)においてiTACT-HBcrAg lossが得られた。重要な点として、核酸アナログ治療開始からHBV DNA lossおよび iTACT-HBsAg loss(あるいは最終フォローアップ)までの期間中央値はそれぞれ35日、175日であった。また、同種移植後にHBs抗体を認めなかった1例を除き、iTACT-HBcrAg lossあるいはHBs抗体が陽性であった8例中7例においては、フォローアップ中において核酸アナログ中止後のHBV再活性化を認めなかった。以上の結果より、iTACT-HBcrAgは早期のHBV再活性化診断に役立つとともに、核酸アナログを安全に中止するためのサロゲートマーカーになりうる。
2: おおむね順調に進展している
当院において、前向き観察研究に参加された患者様の保存検体を用いて、新しいHBV血清マーカーを測定し、高感度HBコア関連抗原の臨床的意義を検証でき、英語論文として受理された(Hagiwara S, et al. Hepatol Res. 2022 Feb 23 in press)。
高感度系の血清マーカーを組み合わせて、HBV再活性化後の核酸アナログ中止規準の確立を目指す。
予定の検査費用負担が少なく済んだため、次年度への繰り越しを必要といたしました。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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