研究実績の概要 |
HBV既往感染歴を有する造血器腫瘍治療後のHBV再活性化に対し、定期的なHBV DNAモニタリングに基づく核酸アナログ先制治療により関連する肝障害予防は可能になったが、核酸アナログの中止規準は確立されていない。我々は、名古屋市立大学病院にて2008年から2020年までに、HBV既往感染歴を有する造血器腫瘍患者27例のHBV再活性化後の保存血清を用いて、高感度HBコア関連抗原(iTACT-HBcrAg)を測定し、その有用性をレトロスペクティブに検討し、iTACT-HBcrAgは早期のHBV再活性化診断に役立つとともに、核酸アナログを安全に中止するためのサロゲートマーカーとなりうることを報告してきた(Hagiwara S, et al. HepatolRes. 2022 Sep;52(9):745-753.)。また、多機関合同のレトロスペクティブ研究を実施し、2008年から2020年までにHBV再活性化と診断した44例について、iTACT-HBcrAgの意義を検討した。その結果、先行研究(名古屋市立大学単施設)と同様にiTACT-HBcrAgの有用性が検証された(Suzuki T, et al. J Gastroenterol. 2022 Jul;57(7):486-494.)。さらに、別のコホートとして、HBキャリア27例および既往感染22例における核酸アナログ中止後の経過について多機関合同のレトロスペクティブ研究結果を発表した(Suzuki T, et al. Hepatol Res. 2023 Apr;53(4):289-300.)。現在、愛知県がんセンターにおいて、HBV既往感染歴を有し、がん化学療法を受けた血液疾患患者において、治療前後の保存血清を用いて高感度iTACT-HBcrAgをレトロスペクティブに評価する研究についてIRB申請承認を受け、実施中である。
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