研究課題/領域番号 |
20K08741
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 淳一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40748472)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん / 多発性骨髄腫 / IMiDs |
研究実績の概要 |
(1) 昨年度に行ったSILAC-MSにより同定した候補因子の絞り込み 昨年度に同定したデキサメタゾン処理によってポマリドミド存在下でのCRBNへの親和性が変化した候補因子群について、多発性骨髄腫細胞株(RPMI8226)を用いて (a) 両剤併用によって細胞内でタンパク質分解が促進されるか、(b) その候補因子のノックダウンにより細胞株の増殖が阻害されるか、を検証した。その結果、候補因子群の中でタンパク質Xのみが両方の条件を満たした。この結果はタンパク質Xが両剤併用による抗骨髄腫作用の主要な標的であることを示唆する。 (2) タンパク質Xの薬剤耐性変異体の作製 ポマリドミドによって分解が促進される標的タンパク質の主要なグループはC2H2 ZNFモチーフを持つタンパク質であり、既知の構造的デグロンに変異を入れることでポマリドミドによる分解に耐性を持つ変異体を作製できる。タンパク質XはC2H2 ZNFモチーフを複数含むため、それぞれのZNFモチーフに変異を導入し薬剤耐性変異体の作製を目指した。しかし、各ZNFに点変異を導入した変異体はいずれもポマリドミド耐性を示さなかった。タンパク質Xの各ZNFをEGFPに連結したモデル系を用いた実験でも全てのZNFで有意な分解は観察されなかった。この結果から、構造的デグロンとしては「弱い」ZNFが複数集まることで構造的デグロンとして働く、もしくは未知の構造的デグロンに基づいて分解を受ける、ことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞レベルでの薬理作用に関する有望な標的を絞り込むことができた。薬剤耐性変異体の作製が予定通りに進まなかったが、薬剤耐性変異体の解析は重要な実験と位置付けているものの必要であれば他の実験(野生型の過剰発現など)で代替できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) タンパク質Xの構造的デグロンの同定 既知の情報に基づいて薬剤耐性変異体を作製することができなかったので、改めてタンパク質Xの構造的デグロンの同定を目指す。具体的にはサイズやドメインごとの分割変異体を評価し、絞った領域内のデグロンモチーフに対して変異を導入する。薬剤耐性変異体の作製が困難だった場合は、野生型の過剰発現する細胞株を樹立し、表現型をレスキューできるかどうかを検証する。 (2) トランスクリプトーム解析 タンパク質Xをノックダウンした多発性骨髄腫細胞株のmRNA-seq、および薬剤耐性変異体を発現する(もしくは野生型を過剰発現する)多発性骨髄腫細胞株を薬剤処理してmRNA-seqを行い、タンパク質Xの分解を介したトランスクリプトームの変化を解析する。 (3) デキサメタゾンがCRBNの基質認識に影響を与える分子メカニズムの解明 デキサメタゾン処理によるCRLCRBNの局在や修飾への影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行して標的タンパク質をノックダウンした細胞のRNA-seqを行う予定であったが、計画を変更し、標的タンパク質の薬剤耐性変異体を発現する細胞のRNA-seqと同時に行うことにしたため。 来年度にmRNA-seqの受託解析費として使用する。
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