研究実績の概要 |
(1) タンパク質Xの構造的デグロンの探索 昨年度の結果より、IMiDsとデキサメタゾン併用の強力な抗骨髄腫作用を媒介することが示唆されたタンパク質Xについて、そのZNFの点変異によってIMiDs耐性変異体を作成できなかった。そこで、複数のZNFが関与している可能性を考慮し、2, 3つのZNFの組み合わせについて点変異を導入し薬剤による分解を検証した。しかし、いずれもIMiDs耐性を示さなかった。この結果からタンパク質Xの分解は、未知のデグロンに基づくことが強く示唆された。 (2) 野生型のタンパク質Xの過剰発現によるレスキュー実験 (1)の結果を受け、薬剤耐性変異体ではなく野生型の過剰発現によってレスキュー実験を行うこととした。多発性骨髄腫細胞株はトランスフェクションが困難なため、レンチウイルスベクターにより外来性のタンパク質Xを発現する細胞株を樹立したが、その発現量は内在性と同等程度であった。そこで、タンパク質XをEGFP との融合タンパク質として発現させ、FACSにより発現量が多い細胞を分離し解析した。分離されたポリクローンは、内在性と比べ数倍の融合タンパク質を発現していたが、両剤併用に対して耐性を与えることはなかった。従って、融合タンパク質はタンパク質Xとしての機能を喪失しているか、両剤併用の主要な標的がタンパク質Xだけでないことが示唆された。 (3) トランスクリプトーム解析 モデル系であるRPMI8226株とMosti-1株について、ポマリドミド・デキサメタゾン単剤及び両剤併用の条件でRNA-seqを行った。その結果、両株で共通して併用による相互作用があった遺伝子として25個が同定した。またGSEA (Hallmark)により、両株で共通して単剤処理の和集合と比べ併用で有意にエンリッチした (もしくはエンリッチしなくなった)遺伝子セットを7つ同定した。
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