研究課題/領域番号 |
20K08742
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松岡 由和 関西医科大学, 医学部, 助教 (70533420)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | CD34抗原 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
本年度においては、ヒト臍帯血(CB)由来造血幹細胞(HSC)におけるCD34抗原の役割のより詳細な解析を行った。具体的には、ヒトCB由来CD34+ HSCをFACSにて単離した後、CRISPR/Cas9を用いてCD34抗原をノックアウト(KO)した後、1) 重症免疫不全マウスへの移植による長期骨髄再構築能および多分化能の解析、2) RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析、3) CD34抗原の有無による細胞分裂への影響の解析を行った。 1)においては、重症免疫不全(NSG)マウス左脛骨にヒトCD34+ HSCあるいはCD34抗原をKOしたHSC (CD34KO HSC)を移植し、20週目以降にマウスを犠牲死させ、ヒトCD45+細胞の生着およびT細胞、B細胞、骨髄球系細胞、赤血球/赤芽球系細胞、血小板/巨核球などへの分化を詳細に解析した。その結果、CD34+ HSC移植群とCD34KO HSC移植群ですべての血球細胞の生着、分化能に有意な差は認められなかった。また、CD34KO HSC移植群において、生着したCD133+造血前駆細胞において、確かにCD34抗原が発現していないことがフローサイトメーターによる解析により確認された。2)においても同様に、CD34+ HSCとCD34KO HSC間でCD34遺伝子を除くほぼすべての遺伝子発現に差は認められなかった。また、3)においてもCellTrace violet でCD34+ HSCを染色した後、CRISPR/Cas9を用いてCD34遺伝子をKOした後、in vitroにおいて3日間培養を行ったが、CD34+ HSC群とCD34KO HSC群間で有意な差は認められなかった。これらのことから、ヒト造血幹/前駆細胞においてCD34抗原は優れたマーカーではあるが、機能的にはHSCの幹細胞性を担っていない可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究遂行上、技術的な問題等は発生しておらず、予定通り進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画は当初の予定通り進んでいる。次年度においては、in vivoの解析では統計解析が困難であった、CD34KO HSCのT細胞への分化能をin vitro評価系により解析する。また、その他の系統への分化能に関しても、今一度、in vitroで詳細な評価を行う。以上の結果をまとめ論文投稿を年度内に行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに執行したが、相見積もり等により若干予定より安価に物品を調達することができたため、次年度の消耗品代として充てる。
|