研究課題
真菌の網羅的解析方法の発展に伴い、ヒト腸内真菌叢の全貌が少しずつ解明されており、腸内真菌叢の変容(dysbiosis)が炎症性腸疾患や肥満など様々な疾病で認められることが明らかとなりつつある。同種造血細胞移植の特有の合併症である移植片対宿主病では、腸内細菌叢の撹乱が関与していることが示されているが、腸内真菌叢との関連は不明である。本研究では、高度免疫抑制状態かつ広域抗菌剤や抗真菌剤の投与を要する同種造血細胞移植において、ダイナミックな腸内真菌叢の変動が全身の免疫担当細胞に与える影響と、それが移植片対宿主病の発症にどのような役割を果たしているのかを解明することで、同種造血細胞移植における腸内真菌叢変容の意義を明らか にすることを目的としている。今年度も、同種造血細胞移植症例の糞便サンプルを収集して、糞便サンプルから全真菌DNAを抽出して、ITS1の保存領域に設計したユニバーサルプライマーを用いてPCRを行い、次世代シークエンサーを用いて解析を行った。同時に、糞便をサンプリングした同種造血細胞移植症例の末梢血単核球を、経時的に移植後1、3、6、9、及び12か月の複数の時点でフローサイトメトリーで解析した。来年度も引き続き、症例を蓄積して、末梢血各白血球サブセット、抗菌剤や抗真菌剤投与、腸内細菌叢や移植後合併症である急性移植片対宿主病や菌血症や真菌血症と腸内真菌叢との関連を明らかにして、ヒトを対象とした前臨床試験として、マウスモデルを用いたGVHDに対する真菌プロバイオティクスや糞便真菌移植による治療法の可能性について検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度も、適切に研究が進展している。
同種造血細胞移植症例の糞便サンプルを蓄積し、腸内真菌叢と、腸内細菌叢との関連、末梢血各白血球サブセットとの関連、抗菌剤や抗真菌剤投与との関連、移植後合併症との関連を明らかにする予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (25件) (うち査読あり 25件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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