2022年度においては、節性病変の微小環境を構成するがん関連線維芽細胞(CAF)より分泌されるエクソソームの役割の解明を継続した。エクソソームの腫瘍微小環境への影響の探索として、CAF共培養下/エクソソーム存在下における抗体医薬の作用変化についての検討に焦点を置き、CAF共培養下/エクソソーム存在下において、抗体医薬の直接細胞死作用や補体依存性細胞傷害活性に変化が認められないことを確認し、抗体依存性細胞傷害活性が増強することを確認した。CAFとの共培養下における抗体依存性細胞傷害活性の検討では、NK細胞からのグランザイムBの分泌が亢進されていることを確認した。トランズウェルを用いた検討においても抗体依存性細胞傷害活性が亢進することより、液性因子の関与と推測し、CAFより分泌されるサイトカインを同定した。同定されたサイトカインを添加することによりNK細胞の抗体依存性細胞傷害活性が亢進することを確認した。現在、in vivoでの検討を進めている。 中枢神経病変形成機序の解明においては、中枢神経病変にて発現が認められる遺伝子についての検討を継続した。PDXモデルにて中枢神経に浸潤することが確認されているB細胞リンパ腫細胞株を用いて、当該遺伝子を形質導入したB細胞リンパ腫細胞株のPDXモデルを作成したが、野生株と比較して腫瘍の分布には影響が無かった。そこで、中枢神経における主要な微小環境構成細胞の一種であるアストロサイトより分泌されるサイトカイン存在下において、当該遺伝子に発現変化が見られるかを検討した。サイトカイン存在下において、当該遺伝子発現がタンパクレベルで亢進することを確認した。さらにcell barcodingシステムを応用し、同一個体の各臓器におけるクローン性についての検討に着手している。
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