研究実績の概要 |
昨年度は、まず様々な移植法による移植を実施した患者を対象に、移植早期(2週、4週、8週、12週)の末梢血検体を解析した。この臨床検体解析から、B細胞恒常性異常は実際の慢性GVHD発症よりもかなり早い段階ですでに形成されていることを示唆されるとともに、移植後急性期のB細胞解析が慢性GVHD発症リスク評価に有用なツールとなる可能性が確認された。しかしながら、このような異常なB細胞活性化が起こるメカニズムは明らかになっておらず、それゆえに機序に基づく予防戦略も確立していない。この観点から、今年度では、マウス骨髄移植モデルを用いて、まず、①同種移植後におけるドナー造血幹細胞からの骨髄内B細胞分化異常のプロセスを解明し、②移植後早期からの骨髄内造血異常と慢性GVHD発症の関連を検討し、さらに、③移植後シクロフォスファミド投与(PTCy)によって同種免疫からの骨髄損傷を軽減化することで骨髄内B細胞分化異常および慢性GVHD発症を予防することの有用性を検証した。実験系として、マウスのMHC半合致移植のモデルであるB6ドナーからB6D2F1レシピエントへの骨髄移植を行い、移植後早期からの骨髄内B細胞免疫再構築のプロセスを検討するため、移植後Day7,14,21,28,56,84の骨髄細胞を得て、共通リンパ系前駆細胞からのB細胞骨髄内分化(pre-proB, proB, preB, immature-B)をフローサイトメトリーにて観察した。さらにday28,56,84の末梢におけるB細胞成熟過程(transitional-B, follicular-B, marginal zone-B, germinal center-B)を確認するため、脾臓およびリンパ節のB細胞系列を解析した。この結果、ドナーグラフト由来Teffの骨髄浸潤抑制とドナー幹細胞由来Tregの分化促進が、移植後B細胞分化再構築に不可欠な要素であることが示された。
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