研究課題
慢性GVHDの病態基盤としてのB細胞恒常性異常の機序とこれへの治療的介入については十分な検討がなされていない。今回の研究では、移植急性期の免疫モニタリングに基づく確度の高い発症リスク評価と発症前からの先制治療の開発を目指す。昨年度までに、様々な移植法による移植を実施した患者を対象に、移植早期(2週、4週、8週、12週)の末梢血検体を連続的に解析した。この臨床検体解析から、B細胞恒常性異常は実際の慢性GVHD発症よりもかなり早い段階ですでに形成されていることを示唆されるとともに、移植後急性期のB細胞解析が慢性GVHD発症リスク評価に有用なツールとなる可能性が確認された。この結果をもとに、マウス骨髄移植モデルを用いて、まず、①同種移植後におけるドナー造血幹細胞からの骨髄内B細胞分化異常のプロセスを解明し、②移植後早期からの骨髄内造血異常と慢性GVHD発症の関連を検討し、さらに、③移植後シクロフォスファミド投与(PTCy)によって同種免疫からの骨髄損傷を軽減化することで骨髄内B細胞分化異常および慢性GVHD発症を予防することの有用性を検証した。マウスMHC半合致移植を実施し、移植後早期からの骨髄内B細胞免疫再構築のプロセスを検討したところ、グラフト由来アロ反応性T細胞が移植直後に骨髄に多く浸潤すると、共通リンパ系前駆細胞からのB細胞骨髄内分化が遅延し、末梢での成熟B細胞ホメオスタシスが破綻することが明らかになった。この現象は、PTCyによってT細胞除去を行うことで回復し、正常なB細胞系列の再構築が促進された。さらにPTCy後に増加するTregについて検証したところ、グラフト由来Tregではなく、造血幹細胞由来Tregの維持が長期的なB細胞再構築に重要であり、慢性GVHDの発症抑制に寄与することが示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Blood Cell Therapy
巻: 2 ページ: 1-6
10.31547/bct-2022-023
JCI Insight
巻: 8 ページ: 1-21
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