研究課題/領域番号 |
20K08754
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
江口 峰斉 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50420782)
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研究分担者 |
江口 真理子 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (40420781)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前白血病幹細胞 / 白血病幹細胞 / MLL融合遺伝子 / TEL融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
MLL融合遺伝子とTEL-AML1融合遺伝子を有するマウスES細胞を作製し、免疫不全マウスへの移植による白血病モデルを用いて前白血病幹細胞の白血病幹細胞への進展に必要な因子について解析を行った。MLL融合遺伝子、TEL-AML1融合遺伝子ともに単独では移植マウスに早期に白血病を発症しないことから、これらの融合遺伝子のみを有する細胞は前白血病幹細胞としての性格を有しており、ES細胞を用いた前白血病幹細胞モデルは有用な実験系であると考えられた。レトロウイルスベクター導入による挿入変異の付加によりTEL-AML1陽性細胞では特定の遺伝子の発現の低下・抑制が移植マウスでの白血病発症の促進に寄与し、またMLL融合遺伝子陽性細胞では、特定の遺伝子の発現亢進が白血病の発症に寄与することが示された。 前白血病幹細胞の形成過程と生存のメカニズムを解明するためにヒトiPS細胞と造血細胞への分化実験系を用いて新たな前白血病幹細胞モデルの作製を試みた。健常成人の末梢血よりiPS細胞を樹立し、Bリンパ球系の前駆細胞を含む造血前駆細胞への分化実験系を確立した。iPS細胞から造血前駆細胞への分化により、CD34陽性造血前駆細胞への分化が認められ、また得られたCD34陽性細胞を用いて、Bリンパ球への分化刺激によりB220およびCD127(IL7受容体)を発現するBリンパ球前駆細胞への分化が認められた。この細胞の造血細胞コロニー形成能・増殖能をコロニーアッセイにより検討したところ、低頻度ながら自律性に増殖する造血コロニーが生じることが示された。このコロニー形成はBリンパ球への分化・増殖過程において何らかの遺伝子異常が生じたことによるものと考えられ、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト末梢血を用いたiPS細胞の造血細胞への分化実験系の確立に当初計画よりも時間を必要としたため。
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今後の研究の推進方策 |
MLL融合遺伝子とTEL-AML1融合遺伝子を有するマウスES細胞から得られた前白血病幹細胞について、その遺伝子発現パターンを遺伝子発現アレイにて解析するとともに、レトロウイルスによる挿入変異を導入後の造血前駆細胞で同様に遺伝子発現パターンを解析し、比較検討することにより前白血病幹細胞から白血病幹細胞への進展に必要なシグナル経路・パスウェイの同定を試みる。何らかの有意なシグナル経路が同定された場合、阻害剤による阻害が白血病幹細胞への進展に及ぼす影響をin vitroおよびin vivoで検討する。 またヒトiPS細胞由来の造血前駆細胞より得られる増殖能を獲得した造血コロニーについて、獲得した遺伝子異常の詳細を網羅的な発現遺伝子解析などを用いて検討する。またその造血前駆細胞の分化能や造腫瘍能について、免疫不全マウスへの移植実験系を用いて検討する。 さらにMLL融合遺伝子陽性白血病、TEL-AML1陽性白血病における前白血病幹細胞の形成に必要なこれらの融合遺伝子の形成メカニズムを解明するために、iPS細胞由来造血前駆細胞において、トポイソメラーゼ阻害剤や放射線等の刺激によるDNA切断によりこれらの融合遺伝子が形成される可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:ヒト末梢血を用いたiPS細胞の作製および分化実験に当初計画よりも時間を要し、また必要な試薬の購入費を他の研究費で購入・共用したこともあり、研究費の使用額が予定額より少なくなった。また全ての学会がWeb開催となったことにより、当初予定していた旅費などの経費が不要となり、研究費に次年度使用額が生じた。 使用計画:今年度も当初の研究計画通り、実験を継続する予定である。
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